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『ミッドナイト・ラン』二人の名優の芝居が極上のケミストリーを生んだ、バディ・ムービーの金字塔

(c)Photofest / Getty Images

『ミッドナイト・ラン』二人の名優の芝居が極上のケミストリーを生んだ、バディ・ムービーの金字塔

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ロバート・デ・ニーロは名前で客を呼べる大スターにあらず!?



 映画製作権を握っていたパラマウントは、主人公の賞金稼ぎジャック・ウォルシュ役をロバート・デ・ニーロが演じることに、あまり乗り気ではなかった。彼らはデ・ニーロを「素晴らしい役者ではあるけれども、名前で客を呼べるような大スターではない」と考えていたからだ。事実、ジャック役として検討されたのは、メル・ギブソン、ハリソン・フォード、リチャード・ギア、ミッキー・ローク、マイケル・ダグラス、アーノルド・シュワルツェネッガー、シルベスター・スタローンというA級スターばかり。


 正式にロバート・デ・ニーロが主演することが決定した後も、パラマウントはもう一人の主役である会計士ジョナサン・マデューカス役に、マネー・メイキング・スターを切望する。性別を女性に変更すればロマンティックな展開を描けると計算し、ロック歌手のシェールを打診するも、監督のマーティン・ブレストはこれを拒否。次にパラマウントは、『グッドモーニング, ベトナム』(87)でビッグネームとなったロビン・ウィリアムズを推薦するも、マーティン・ブレストはまたもこれを拒否。監督がジョナサン・マデューカス役に選んだのは、チャールズ・グローディンだった。



『ミッドナイト・ラン』(C) 1988 Universal Studios. All Rights Reserved.


 リー・ストラスバーグに師事して「メソッド演技法」を学んだグローディンは、デ・ニーロと同じくアクターズ・スタジオ出身。舞台を中心に活躍してきた実力派俳優であり、『サタデー・ナイト・ライブ』ではホストを務めたこともあるくらい、コメディの素養も持ち合わせていた。しかしながら彼はマネー・メイキング・スターには遠く及ばず、圧倒的に地味。「このコンビではとても興行収入は見込めない!」とパラマウントは企画を放棄し、権利をユニバーサルに売ってしまう。


 しかし、『ビバリーヒルズ・コップ』(84)でコメディ演出に定評のあったマーティン・ブレストは、確信していた。バディ・ムービーでもっとも大切なことは、役者のネームバリューではなく、役者同士の芝居から生まれるケミストリーであることを。



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