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幸せの追求
「生命、自由及び幸福追求」ーー アメリカ独立宣言で掲げられた一文であり、日本国憲法第13条にもなっている。この幸福の追求を英語で言うと「The Pursuit of Happiness」。本作『幸せのちから』(06)の原題は『The Pursuit of Happyness』。よく読むと“i”が“y”となり、誤った表記となっている。どうして誤植されたタイトルなのかは、劇中で説明されているが、その間違いこそが本作の肝なのである。
本作は、クリス・ガードナーというアメリカ黒人男性の自伝の映画化だ。今では自伝本が書けるほどに成功した男性だが、それまでの道のりは険しかった。幼い息子がいながらホームレスまで経験しつつも、類まれな努力と忍耐力で成功を掴んだ。一代で成功しアメリカン・ドリームを手にいれる…アメリカ人が大好きな物語だ。
アメリカでは、「スモールビジネス」と呼ばれる従業員500人以下の中小企業が、約3,000万社に及び、アメリカ企業のうち約99%はスモールビジネスが占めていると言われている。「スモールビジネスは、アメリカのバックボーン」という言葉を、聞いたことがある人もいるかもしれない。アメリカ人にとって幸福の追求をすることは、自分の会社を興して、自らの手によってサクセスストーリーを手に入れることとも言える。
しかし、劇中の冒頭からクリス・ガードナーは疑問に感じている。「トーマス・ジェファーソンは、どうして”追求”の部分を入れたのだろうか? 幸せとは追求するだけのものだろうか?決して得られないのか。トーマス・ジェファーソンはなぜ知っていたのだろう」と。
クリスは、骨密度を測定する機械のセールスでスモールビジネスを始めたのだが、高価な機械ゆえ全く売れず、非常に困窮した生活を送っていた。妻が働きに出ても家賃すらまともに払えず、息子の保育園も、「Happiness」の綴りもちゃんと書けないような移民が経営するところに入れるのが精一杯であった。
そのような中でクリスは、目の前に止まった真っ赤なフェラーリを見て、幸福の追求を決意する。そして、そのフェラーリに乗っていた男性の職業である、株の仲買人を目指すこととなる。フェラーリが買えるほどの大金があれば、クリスを取り囲む問題はすべて解決できるのだ。