(C)2012 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
既製服が物語る『プラダを着た悪魔』におけるパトシリア・フィールドの功績とは?
2020.04.27
メリル・ストリープ登場!
ワイスバーガーは、ミランダ・プリーストリー=アナ・ウィンター説を否定しているが、読者は否が応でも小説の登場人物に現物を重ね合わせ、そうすることで生まれるスリルと笑いを堪能したはずだ。しかし、映画化された途端に読者の想像は取り払われ、ミランダが具現化されて新たなイメージが作られる。
ましてやベストセラーが映画化された時は、「原作のイメージと異なる!」等々の不満が噴出しがちだ。そこで、製作の20世紀フォックス(現20世紀スタジオ)は、映画化権を取得するや否や、テッパンのキャスティングに着手する。彼らが迷わずオファーをかけたのはメリル・ストリープだ。
アン・ハサウェイ扮するジャーナリスト志願のアンドレアは、その意外性を買われてファッション誌"ランウェイ”の編集長、ミランダのアシスタントとして雇われる。出社当日、全編集部員が恐れ慄く中、白髪にサングラスをかけ、不機嫌そうにエレベーターから降り立ったミランダは、コートをテーブルに放り投げ、緊張するアンドレアのダサいセーターとスカートを一瞥。
『プラダを着た悪魔』ミランダ (C)2012 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
相手の都合を無視してスターバックスまでコーヒーを買いに走らせるのは序の口で、雷がなるほど悪天候なのに飛行機のチケットを手配させたり、まだ発売前の『ハリー・ポッター』の新刊本を入手するよう指示したりと、やることは紛れもないパワハラ。
しかし、ストリープはまさに前半のミランダvsアンドレアの攻防こそが見どころと察知して、テンションは控えめでも、絶妙にデフォルメされた悪魔的演技で場をさらっていく。一方、徐々にアシスタントとして信頼を勝ち得ていくアンドレアの変身ぶりを、ハサウェイがけっこうな太々しさで演じているのも見どころだ。
そんなハサウェイとは対照的に、エミリー・ブラント演じるシニアアシスタント・エミリーの、報われないコメディエンヌぶりもアクセントとして効いている。