既製服が物語る『プラダを着た悪魔』におけるパトシリア・フィールドの功績とは?

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2020.04.27清藤秀人

衣装デザイナーとしての役割とは

　パトリシア・フィールドは『プラダを着た悪魔』で、第79回アカデミー賞の衣装デザイン賞にノミネートされる。しかし、同賞を受賞したのは『マリー・アントワネット』(06)で史実をベースに、艶やかなルイ王朝ルックを編み出したミレナ・カノネロだった。

　カノネロは同じくオスカーに輝いた『炎のランナー』(81)で伝統のプレップスクール・ファッションを復刻したり、最近では『グランド・プタペスト・ホテル』(14)でウェス・アンダーソンの指示で、場面の色彩に準じた服作りを実践した衣装デザイン界の重鎮だ。この分野には『ヴィクトリア女王　世紀の愛』(09)や『女王陛下のお気に入り』(18)等で知られるオスカー・コレクターのサンディ・パウエルもいる。彼女たちは全員、役柄とその時代をイメージソースにして、オリジナルの衣装作りで高い評価を得てきた。

　しかし、パトリシア・フィールドは違う。彼女の功績はスタイリストとして百戦錬磨のコーデセンスを武器に、既製服を映画に取り入れたこと。また、『華麗なるギャツビー』(13)で、プラダやミュウミュウ、ティファニーとコラボして、ゴージャスでデカダンなジャズエイジを再現した衣装デザイナー兼プロダクション・デザイナーのキャサリン・マーティンも、同じグループに属するかもしれない。

　ハリウッド映画の衣装デザインは今や、デザインセンスとコーディネイト力によって支えられている。

文 : 清藤秀人(きよとう　ひでと)

アパレル業界から映画ライターに転身。映画com、ぴあ、J.COMマガジン、Tokyo Walker、Yahoo!ニュース個人"清藤秀人のシネマジム"等に定期的にレビューを執筆。著書にファッションの知識を生かした「オードリーに学ぶおしゃれ練習帳」(近代映画社刊)等。現在、BS10 スターチャンネルの映画情報番組「映画をもっと。」で解説を担当。

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