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『プラトーン』ベトナムでの「自分」を再現することで生まれた戦争映画の傑作 ※注!ネタバレ含みます。

(C)2014 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

『プラトーン』ベトナムでの「自分」を再現することで生まれた戦争映画の傑作 ※注!ネタバレ含みます。

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心の中の「善」と「悪」を体現した2人の上官



※以降、ストーリーの結末に触れる記述があります。


 ストーンの小隊はある日、北ベトナム軍を支援しているという村を捜索した。ここで、極度の緊張状態におかれたストーンは片足の村人の足下に狂ったように銃を乱射して脅したという。しかしその後、同じ小隊の仲間がベトナム人少女をレイプしようとするのを発見すると、力ずくでやめさせた。このエピソードは映画の中盤でほぼそのまま描かれており、物語のターニングポイントとしても重要な意味を持っている。


 主人公のクリスは、ベトナム人に暴力を振るいながら、他方では少女を救うという二律背反的な振る舞いで自己が引き裂かれている。それは自らの中の「理性」と「暴力」の闘いでもあるが、もちろんそれは簡単に決着がつくものではない。この「理性」と「暴力」の闘いこそ、『プラトーン』の大きなテーマだ。


 この内面的な戦いを映画的なドラマに昇華するため、ストーンはエリアスを人間の良き面を体現する「善」、バーンズは戦場ではどんな暴力も肯定する「悪」として寓話的に物語に配置した。


 ベトナムの従軍から20年、ストーンはずっと心の中でこの善悪の葛藤にさいなまれてきたのだろう。しかしその葛藤にも一つの区切りを与えなければ、心は蝕まれていく。そのためストーンはストーリーでこの善悪の闘いに決着を与えなければならなかった。



(C)2014 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. 


 善と悪を体現する2人の反目はエスカレートし、ついにバーンズは戦闘中にエリアスを殺す。エリアスは死の瞬間腕を広げ、キリストの如く天を仰ぎ見ながら死んでいく。人類の全ての罪を背負って十字架にかけられたというキリストのように、エリアスはクリス(=ストーン)たちが犯した罪を全て背負って死んでいくのだ。そして「理性」を殺した「暴力」も罰せられる日がやってくる。ラストの大戦闘の後、負傷したバーンズを見つけたクリスは彼に銃を向ける。バーンズは命乞いもせず、静かにつぶやく。「やれよ」。次の瞬間クリスは引き金を引く。バーンズもまた長きにわたる葛藤に疲れ、死を望んでいたのだ。


 ラスト、二人の「父」を失ったクリス(=ストーン)は、人生を意義あるものとしなければならないとつぶやく…。


 『プラトーン』は54日間という短期間で撮影を終えた。低予算のため、あきらめたショットもあったが、ストーンは撮影を終えた日の朝を満足げに振り返る。「それは私がベトナムを去って以来味わった、もっとも甘美なひと時だった」。


 ベトナム従軍から20年、オリバー・ストーンは自らの戦闘体験を忠実にスクリーンに再現し葛藤に一つの決着をつけた。それは自らを縛り付けてきた過去のトラウマと死への願望に対する一つの区切りだったに違いない。それが『プラトーン』を特別な映画にし、多くの観客に今も支持される理由のひとつだろう。


 しかし、人間の内なる葛藤は、区切りはつけられても、決して終わることはない。事実、映画のラストでクリスのナレーションはこうも語る。


 「死後もエリアスとバーンズの反目は続くだろう」


 オリバー・ストーンの闘いは終わらなかった。彼は『プラトーン』以降も、1~2年に1本というハイペースで精力的に作品を発表し続けた。『ウォール街』(87)『トーク・レディオ』(88)『JFK』(91)『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(94)・・・それらは常に政治や社会の在り方に疑念を投げかける戦闘的なテーマのものが殆どだった。それはストーンの内なる葛藤との戦いの表明に違いないのだ。



参考文献:「オリバー・ストーン 映画を爆弾に変えた男」(ジェームズ・リオーダン 遠藤利国・訳/小学館)



文: 稲垣哲也

TVディレクター。マンガや映画のクリエイターの妄執を描くドキュメンタリー企画の実現が個人的テーマ。過去に演出した番組には『劇画ゴッドファーザー マンガに革命を起こした男』(WOWOW)『たけし誕生 オイラの師匠と浅草』(NHK)『師弟物語~人生を変えた出会い~【田中将大×野村克也】』(NHK BSプレミアム)。



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『プラトーン』

ブルーレイ発売中 ¥1,905+税 

20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン

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