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『パニック・ルーム』主役交代に妊娠、パニックだらけの舞台裏とは?
超一流のスタッフとキャストを招聘…そこからが悪夢の始まり
登場人物の少ない密室劇であるが故に、キャスティングには細心の注意が払われた。主人公のメグには、人気と実力を兼ね備えたニコール・キッドマン。その娘役サラには、「アリー my Love」でキャリスタ・フロックハートの娘を演じていた、ヘイデン・パネッティーアが抜擢される。
強盗団の一人バーナム役には、フォレスト・ウィテカー。元々のデヴィッド・コープの脚本では、威圧的な白人男性として書かれていたが、フィンチャーが「金銭的に追い詰められた、心優しい黒人労働者の方がリアリティがでる」と判断して、のちのアカデミー主演男優賞俳優が選ばれた。
凶暴な性格のラウール役には、ドワイト・ヨアカム。彼はカントリー歌手として2度のグラミー賞受賞に輝くミュージシャンだが、独特な風貌を活かして映画にも多数出演。ビリー・ボブ・ソーントンが監督した『スリング・ブレイド』(96)では粗暴な男を圧倒的な存在感で演じきり、デヴィッド・フィンチャーのお眼鏡に叶うこととなった。
計画の立案者であるジュニア役には、後年『ダラス・バイヤーズクラブ』(13)でアカデミー助演男優賞に輝くことになるジャレッド・レト。この役は最後まで難航していて、エージェントの勧めでジャレッド・レトをオーディションすることになったが、彼はラッパー風の出で立ち+金歯というぶっ飛んだ格好で現れ、フィンチャーを辟易させてしまう。
しかし2度目のオーディションでは、役を完全に理解した上で髪型を細かい三つ編みに変更。見事ジュニア役をゲットする。フィンチャーとは、『ファイト・クラブ』に続いて2度目のコラボレーション作品となった。
撮影監督には、ジャン=ピエール・ジュネ、ロマン・ポランスキーといった巨匠の作品を支えてきた名カメラマンのダリウス・コンジ。音楽には、『ロード・オブ・ザ・リング』でアカデミー作曲賞賞を受賞しているハワード・ショアを招聘。超一流のスタッフとキャストが結集して、撮影は順調に進む…かに思われたが、ここからが悪夢の始まり。デヴィッド・フィンチャーは、予期しないトラブルに次々と見舞われることになる。