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『パニック・ルーム』主役交代に妊娠、パニックだらけの舞台裏とは?
まさかのジョディ妊娠騒動、撮影監督の更迭
もともとデヴィッド・フィンチャーはたくさんのテイクを重ねる監督だが、悠長なことをしていると彼女のお腹はどんどん膨らんでしまう。とにかく急いで撮影を行おうとするが、『パニック・ルーム』はただでさえ時間と手間がかかる作品。パニック・ルームに身を潜めるジョディ・フォスター親子、その外で待ち構える強盗団、彼らの様子を映し出す防犯カメラ、これらを全て別撮りしてタイミングを合わせる必要があったからだ。
おまけに、クリステン・スチュワートは成長期。撮影間中にぐんぐん背が伸び、撮影当初はジョディ・フォスターよりも小柄だった彼女は、3インチも身長が高くなって、撮影終盤にはジョディを見下ろすほどに。わずか一晩の出来事なのにこれでは整合性がつかず、フィンチャーは二人が並ぶシーンは特に苦慮しながら撮影を進めた。
『パニック・ルーム』(C)2002 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
さらに問題があった。ヨーロッパの巨匠たちの作品を撮り続けてきたダリウス・コンジは、じっくり腰を据えて妥協しない絵作りをする、芸術家肌の撮影監督。ワンカットのこだわりが強すぎて、遅々として撮影が進まない。業を煮やしたデヴィッド・フィンチャーはダリウス・コンジを更迭することを決断。新しい撮影監督に、コンラッド・W・ホールを迎えた。
様々なトラブルに見舞われながらも、フィンチャーは何とか映画を完成させる(撮影期間が足りなかったため、ジョディ・フォスターが出産した後も追加撮影を行った)。
しかしながら公開当時から現在に到るまで、『パニック・ルーム』は高い評価を得ているとは言い難い。筆者としては、非常に残念至極なのだが。デヴィッド・フィンチャー史上、最も過酷な現場だったであろう本作の撮影風景を映画化したら、ある意味で『パニック・ルーム』以上のサスペンス・ムービーになるかもしれない。
文:竹島ルイ
ヒットガールに蹴られたい、ポップカルチャー系ライター。WEBマガジン「POP MASTER」主宰。
『パニック・ルーム』
発売・販売:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
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