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『デッド・ドント・ダイ』ジャームッシュが込めた、文明批評とジョージ・A・ロメロへのリスペクト

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『デッド・ドント・ダイ』ジャームッシュが込めた、文明批評とジョージ・A・ロメロへのリスペクト

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ジョージ・A・ロメロとミッドナイト・ムービー



 今回の映画を撮った動機に関して、監督自身はこう言う。「これまでジョージ・A・ロメロ監督の要素を自分の作品に持ち込むチャンスはなかったが、実は彼の映画の大ファンだった」(前述のクライテリオン・コムより)


 ロメロはゾンビ映画を最初に世に送り出した監督で、『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』(68)は画期的な低予算映画として全米に衝撃を与えた。16ミリによる自主映画として作られた後、最初はコロムビア映画に持ちかけたものの、配給を断られた。


 その後、ロジャー・コーマン製作のB級映画で知られるAIPを訪ねたら、エンディングを変え、セックス描写を入れてほしいと注文があり、今度はロメロ側から断った。やがて、ウォルター・リードが買い取り、68年に封切られたが、最初の興行は失敗だった。しかし、やがて“ミッドナイト・ムービー”としてカルト的な人気を得るようになる。


『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』予告


 スチュアート・サミュエルの著書“Midnight Movies”(マクミラン社より刊行)によると、「71年にニューヨークのウェイヴァリー劇場では、毎週、金曜日と土曜日に『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』を見るため、人々が劇場にやってくる。(中略)観客たちはリピーターが多く、毎週、決まって劇場に集い、ある批評家が<最良のホラー映画>と呼んだこの作品に悲鳴を上げながら声援を送り、そのショッキングな90分を堪能する」。


 当時、“ミッドナイト・ムービー”と呼ばれた作品には、他にアレハンドロ・ホドロフスキー監督の『エル・トポ』(70)やロック・ミュージカルの『ロッキー・ホラー・ショー』(75)、ジョン・ウォーターズの『ピンク・フラミンゴ』(72)、ハル・アシュビー監督の『少年は虹を渡る』(71)等があった。「こうした映画は一種のショーであり、パーティでもあった。それは、毎週、教会に行く行為に似ていた。真夜中の映画に集うことは、アメリカの若者文化のユニークな現象となったのだ」と前述の著書でサミュエルズは書いている。



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