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『デッド・ドント・ダイ』ジャームッシュが込めた、文明批評とジョージ・A・ロメロへのリスペクト

(c)2019 Image Eleven Productions Inc. All Rights Reserved.

『デッド・ドント・ダイ』ジャームッシュが込めた、文明批評とジョージ・A・ロメロへのリスペクト

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ジョージ・A・ロメロは“インディーズ映画のゴッドマザー”



 ジャームッシュは1953年生まれなので、彼が18歳の時、『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』が、ニューヨークで“ミッドナイト・ムービー”として話題になっていた。ニューヨーク大学で映画作りを学び始めた時期と重なるのではないだろうか。


 前述のクライテリオンのインタビューでは「この映画を初めて見たのは、70年代の初めだった。カルトムービーになっていたので、何度も繰り返してみた。その後、『ゾンビ』(78)や『死霊のえじき』(85)、『ザ・クレイジーズ』(73)、『マーティン』(77)といった他のロメロ作品も追いかけたが、1番強烈だったのは『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』と『ゾンビ』だった」と語っている。



『デッド・ドント・ダイ』(c)2019 Image Eleven Productions Inc. All Rights Reserved.


 60年代後半にピッツバーグで独自の低予算映画作りを始め、それをニューヨークで“ミッドナイト・ムービー”として成功させたロメロ。80年代にニューヨークで起きた新しいインディペンデント映画の流れの中心的な人物となったジャームッシュ。


 インディペンデント映画界の先駆的な存在として、ジャームッシュはロメロをリスペクトしていたのではないだろうか。


 彼は『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』を、「僕たちの映画の“ゴッドマザー”ではないかと思っている。今回の映画はそんな彼へのオマージュだし、彼の作品の延長戦上にあるものだ」(クライテリオン・コム)と語っている。


 『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』は主人公たちが家族の墓参りに向かう場面から始まるが、『デッド・ドント・ダイ』は警官たちが墓場に行く場面からスタート。冒頭からロメロ作品の引用となっている。


 内容に目を向けると、ゾンビから逃れて小さな家で過ごす複数の男女の異様な体験が『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』では描き出される。そこにはヴェトナム戦争や人種問題に揺れる60年代後半のアメリカ人の恐怖が投影される。前述の“Midnight Movies”の中で「モンスターは自分の内側や他の人物との隙間にいて、私たち自身が作り出している」とロメロは語る。


 一方、現代の気候変動や物質文明を風刺した今回の新作に関して、ジャームッシュも似た発言を残している――「ゾンビは僕たちの内部から生まれている。つまり、彼らは僕たち自身だ」(クライテリオン・コムより)。


 ゾンビの解釈に関しても、ふたりの監督には共通点がある。

 

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