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『ゴースト・ドッグ』ヒップホップにマーシャルアーツ、多様な文化が交差したジャームッシュ映画

『ゴースト・ドッグ』ヒップホップにマーシャルアーツ、多様な文化が交差したジャームッシュ映画


 『ゴースト・ドッグ』(99)は、ヒップホップとマーシャルアーツが融合された革新的な作品だ。今ではその2つが融合されることは珍しいことではないが、当時はとても斬新だった。しかも、それはジム・ジャームッシュによって作りだされた。ジャームッシュが、そのように融合させたことで、今は当たり前となったと言っても過言ではないだろう。


 ジャームッシュは、長編2作目の『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(84)で、カンヌ映画祭にて新人監督に贈られるカメラ・ドール賞を獲得し、一躍人気の監督となった。アメリカの映画批評家ポーリン・ケイルは、「クールで楽しく、さりげない魅力のあるパンク・ピカレスク作品」と『ストレンジャー・ザン・パラダイス』を絶賛している。その評価は、『ゴースト・ドッグ』でも通じるところがある。本作は、クールで楽しく、そしてさりげない魅力のあるパンク・ピカレスクで、さらにヒップホップとマーシャルアーツが加わった作品なのだ。



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武士道が描かれた脚本



 原題の副題に「サムライ」の文字があるように、本作はアメリカのニューヨークに住む「サムライ」の物語だ。主人公のゴースト・ドッグ(フォレスト・ウィテカー)は、日本の武士道が書かれた「葉隠」が愛読書であり、過去に世話になったイタリアン・マフィアのルーイ(ジョン・トーメイ)専用の殺し屋として働いていた。しかし、依頼された仕事で目撃者がいたことが問題となり、逆にイタリアンマフィアに追われてしまう……。 この脚本を、ジャームッシュは、本作にも登場する「葉隠」を熟読し執筆したという。



 ジャームッシュは、「本作の原作となった「葉隠」は600ページ超の大作だ。主人公ゴースト・ドッグは、いわば”影”であり、ドン・キホーテのようなキャラクターにしたかった」と語っている。主人公ゴースト・ドッグが冒頭で引用する「武士道とは死ぬこととみつけたり」とは、「葉隠」の有名な一節である。殺し屋として常に死を意識しながらも、イタリアン・マフィアや英語を殆ど話さない移民のアイスクリーム屋(イザック・ド・バンコレ)、読書好きな少女(カミール・ウィンブッシュ)たちとの交流を描いているのが、興味深い。


 イタリアン・マフィアとの関係では、ゴースト・ドッグにとって大きな意義がある過去を描きつつ、「サムライ」らしい忠誠心も描いている。英語をほとんど話さない移民アイスクリーム屋とは、言葉だけでない人との繋がり、そしてゴースト・ドッグがフランス語を理解しているかもしれないというインテリ的なところも垣間見られる。読書好きの少女との関係では、ゴースト・ドッグが未来に遺したいものを描いている。人との関係で、過去・現在・未来を描いているのだ。



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