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『ダウン・バイ・ロー』モノクロで綴る、トム・ウェイツ、ジョン・ルーリー、ロベルト・ベニーニの”親しき関係”

(c)1986 BLACK SNAKE Inc.

『ダウン・バイ・ロー』モノクロで綴る、トム・ウェイツ、ジョン・ルーリー、ロベルト・ベニーニの”親しき関係”

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ウェイツ、ルーリー、ベニーニが作り上げる独特のニュアンス



 売れないDJのザックを演じるトム・ウェイツは夜の裏通りをテーマにした数々のアルバムで知られる個性派のシンガーソングライター。デビューした70年代は音楽通だけが知るカルト的な存在だったが、フランシス・フォード・コッポラ監督の『ワン・フロム・ザ・ハート』(82)で音楽を担当してから映画界でも名前が知られるようになった。コッポラ作品には脇役で俳優としても出演。


 そして、『ダウン・バイ・ロー』が初の主演作となった。ウェイツと監督が初めて出会ったのは80年代半ばのこと。バスキアのアート展で華やかな美術関係者に囲まれ、気後れしていたふたりは別のバーに移動して意気投合。監督は役者として大きな可能性を彼に感じて、ザック役をふったという。


 劇中では彼の曲も使われる。冒頭、「ジョッキー・フル・オブ・バーボン」のちょっとよじれた音楽が流れると、ニューオリンズの少し古ぼけた風景が新鮮な魅力をたたえ始める。エンディングに流れるのは「タンゴ・ティル・ゼイ・アー・ソア」。どちらもウェイツの85年の傑作アルバム「レイン・ドッグ」に収録されている。


 

『ダウン・バイ・ロー』(c)1986 BLACK SNAKE Inc.  


 一方、ジョン・ルーリーは『ストレンジャー・ザン・パラダイス』に続いての出演。当時の彼はニューヨークのフェイク・ジャズバンド、ラウンジ・リザーズのサックス奏者。監督とはニューヨークのクラブで70年代後半にすでに出会っていたようだ。


 前作ではヒロインの不愛想な“いとこ”を淡々と演じていい味を出していたが、今回はスーツでキメたクールなポン引き役で、以前より少し役者らしい顔を見せる。劇中の音楽も担当しているが、シンプルな音作りで、不協和音のような音も入れることで、映画全体にゆるい緊張感が生まれていく。


 ロベルト役は後に監督・主演作『ライフ・イズ・ビューティフル』(97)で知られることになるロベルト・ベニーニ。ジャームッシュによれば、ベニーニにとっては言葉(イタリア語)が武器だが、それを奪われ、片言の英語を話すことで、役者としては新しい挑戦になったようだ。


 映画の初公開時にベニーニは無名だったので、まわりとはずれた英語を話しつつも、いつも笑顔を絶やさない彼の存在が、(ちょっとウザいものの)新鮮に思えたものだ。


 通好みのふたりのミュージシャンと英語がうまく話せないイタリアのコメディ男優。既成のアメリカ映画とは異なる出演者たちが揃うことでオフビートな感覚があふれた作品になっている。



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