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『サンダーロード』サンダンス絶賛の傑作短編を長編映画化。超パワフルな“やらかし”コメディを見逃すな!

『サンダーロード』サンダンス絶賛の傑作短編を長編映画化。超パワフルな“やらかし”コメディを見逃すな!

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サンダンス映画祭で絶賛された傑作短編をスケールアップ



 短編の『サンダーロード』は、いわゆる“ワンシーンワンカット”で構成されている。カミングス演じる警察官のジェームズが、母親の葬式で参列者の前に立つ。遺族を代表して母親の思い出を語るが、悲しみのあまり焦燥し、混乱しているのは誰の目にも明らかだ。


 やがてジェームズは、母親が大好きだったブルース・スプリングスティーンの「涙のサンダーロード」をラジカセで流して、曲に合わせて歌って踊ろうとする。参列者の誰もがなにごとかと戸惑い、ジェームズ自身もまた自分が失態をやらかしたと気づく。そして、さらに狼狽の度を増してしまうのだ。


 この可笑しくも痛々しい12分間の小品が、サンダンス映画祭で最優秀短編賞に輝いたことは最初に述べた。作品が絶賛されただけでなく、無断で使用していた「涙のサンダーロード」を、スプリングスティーン本人が作品を鑑賞した上で使用許可を出してくれるという、奇跡みたいなオマケも付いた。




 しかしカミングスの前にハリウッドの扉は開かなかった。少なくとも長編映画のオファーが次々と舞い込んだりはしなかった。そこでいくつもの短編映画を作って研鑽を積み、クラウドファンディングで資金を募って、完全なインディーズ体制で創り上げたのが現在劇場公開されている長編バージョンの『サンダーロード』なのである。


 カミングスは、長らく『サンダーロード』の長編化は不可能だと考えていたという。短編のコンセプトは、「誰かの人生で最も興味深い瞬間」を切り取ってみせることだった。つまり母親の葬儀での12分間こそがジェームズという主人公にとってのクライマックスであり、長編化するにしても、そこに至るまでのエピソードを前日譚として付け加えるのは蛇足でしかないと判断したからだった。


 ところがある時、短編で描いた12分間を、長編のクライマックスではなく冒頭に持ってくるアイデアを思いつく。短編では、葬儀で大恥をかいた警官のジェームズが差し伸べた手を、幼い娘のクリスタルが拒絶する姿が描写されている。つまり、長編で描くべき物語は、葬儀の前ではなく葬儀の後なのではないか? 長編の『サンダーロード』は、一度尊厳を失ってしまった男が、なんとしても娘の尊敬と愛情を取り戻そうとする苦闘の物語に生まれ変わった。



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