(c) 2013 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved.
『ホワイトハンター ブラックハート』非破滅型作家イーストウッドが描く、破滅型作家ジョン・ヒューストンの物語
2020.07.14
自滅の道を辿る“負け犬たち”
イーストウッド映画において芸術産業、娯楽産業に携わる者たちは、常に自滅の道を辿ってきた。『センチメンタル・アドベンチャー』(82)のカントリー歌手レッドは、結核に罹っているにも関わらず治療を拒み、夢をつかむチャンスを台無しにする。『バード』(88)のサックス奏者チャーリー・パーカーは、圧倒的才能を麻薬とアルコールに削り取られ、34歳という若さで夭逝する。
「今までの人生で、負け犬と呼べる人たち、あるいは勝利者になることを望まなかった人たちと大勢知り合った。そういう人たちには一定の才能があるが、その才能を浪費したり、台なしにしたりせずにはいられない。成功にあと一歩というところまで近づくと、わざわざ躓くように立ち回ってしまう。彼らは勝利者になることが怖いんだ」
(『孤高の騎士クリント・イーストウッド』より抜粋)
『ホワイトハンター ブラックハート』(c) 2013 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved.
これまでイーストウッドは、そんな負け犬たちを優しく見つめてきた。だが、イーストウッドは自分自身と彼らを同化させている訳ではない。むしろ、自分とは異質の人種だと考えている。敬愛するジョン・ヒューストンに対しても、イーストウッドは一定の距離を取っているのだ。
「ヒューストンは、およそ何かをおそれたり、誰かをおそれたりすることのない人だった。(中略)でも、こういう磊落さは、私の性格とは反対だ。わたしは、自分を信頼してくれている人たちのことを絶対に裏切れない」
(『孤高の騎士クリント・イーストウッド』より抜粋)
非破滅型作家イーストウッドが描く、破滅型作家ジョン・ヒューストンの物語。だからこそ王になろうとした男の自壊を、イーストウッドは冷徹な眼差しで描くことができたのだろう。ジョン・ヒューストンが負け犬に失墜してしまう物語を。
文:竹島ルイ
ヒットガールに蹴られたい、ポップカルチャー系ライター。WEBマガジン「POP MASTER」主宰。
『ホワイトハンター ブラックハート』
DVD ¥1,429 +税
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