2020.07.16
スプリングスティーン本人も動かした主人公の言葉
本作は英国ガーディアン紙で活躍するジャーナリスト、サルフラズ・マンズールの回顧録が原作となっている。つまり実話がベースだ。
監督のグリンダ・チャーダはマンズールと旧知の仲で、この回顧録を是非映画化しようと考えていた。そのためにはスプリングスティーンの楽曲を使用することが絶対条件だ。
『カセットテープ・ダイアリーズ』(c)BIF Bruce Limited 2019
そんな折、2人は偶然スプリングスティーンのドキュメンタリー映画のプレミア上映に招待された。レッドカーペットの脇で待っていると、いきなりスプリングスティーンがマンズールに近寄ってきて「君の本は素晴らしかった」と声をかけたという。なんと彼は偶然にもマンズールの回顧録を読んでいたのだ。そこから話はトントン拍子に進み、本作はスプリングスティーンの楽曲を全編に散りばめた類まれな作品となった。
スプリングスティーンの言葉に後押しされたマンズール少年は自らの言葉を世界に発し、それがスプリングスティーンへと回帰した。その結果マンズールの言葉は映画となり、また世界へと拡散されていく。言葉は確実に世界を変える。その証左がこの作品に他ならない。
文:稲垣哲也
TVディレクター。マンガや映画のクリエイターの妄執を描くドキュメンタリー企画の実現が個人的テーマ。過去に演出した番組には『劇画ゴッドファーザー マンガに革命を起こした男』(WOWOW)『たけし誕生 オイラの師匠と浅草』(NHK)『師弟物語~人生を変えた出会い~【田中将大×野村克也】』(NHK BSプレミアム)。
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『カセットテープ・ダイアリーズ』
2020年7月3日(金)より、TOHOシネマズ シャンテ 他全国ロードショー
配給:ポニーキャニオン
(c)BIF Bruce Limited 2019