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『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』青春コメディの傑作を生んだキャスティングの妙と多様な演出

『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』青春コメディの傑作を生んだキャスティングの妙と多様な演出

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『うる星やつら』的空間を現出させたキャスティングの妙



 生徒会長で、史上最年少の最高裁判事を目指すモリ―(ビーニー・フェルドスタイン)と大学入学前にボツワナで女性たちを助ける活動をしようとしているエイミー(ケイトリン・デヴァ―)。なんと言ってもこの主人公2人を演じる若手女優が素晴らしい。


 モリ―は部屋に「Take No Prisoner (情け容赦しない)」という標語を掲げるほど、上昇志向の強い仕切り屋。一方のエイミーは品行方正な優等生、普段は控えめだが、芯の強さを持っている。この2人が繰り広げるやり取りが、まずは純粋に楽しい。


 オタク女子的な内輪受けギャグをかましまくる(けっこう下品な下ネタもあり)のだが、まるで漫才のように小気味よく息のあった会話は、10代後半のアホさと無邪気さ、有り余るパワーを誇張しながらも、うまく表現されており、この作品最大の見所と言っていいだろう。




 その人物の内面も巧みに設定されている。モリ―は、自意識が肥大するあまり、周りを見下しがちで、クラスのイケメンに対して芽生えた自分の恋心を否定してしまっている。エミリーは自らがレズビアンであることを2年前にカムアウトしているが、好きな女性との距離を中々縮めることができない。


 思春期は自己が肥大しすぎて、身動きできないことがままあるが、まさに2人はそんな状態に陥っている。フェミニズムやLGBTという避けて通ることのできないテーマと、現代の女子高生の等身大の姿を肩ひじ張らずに接続し、クリシェ的な設定に新味を出しているのは、脚本の勝利と言えそうだ。


 ちなみにモリ―を演じたフェルドスタインはなんとジョナ・ヒルの実の妹。兄が主演した『スーパーバッド 童貞ウォーズ』(07)は、まさに本作のひな型となったような作品(これも名作!)。兄妹で、ストーリーラインがほぼ同じ作品で同じような役柄を演じるというのも奇縁である。


 加えて脇役たちのキャスティングも素晴らしい。主人公の同級生たちは個性がインフレを起こしたマンガ的キャラクターも多いが、それらを魅力的に演じきる巧者を、よくぞここまで集めたと感心してしまう。




 彼らが主人公2人を翻弄し、ドタバタ劇が展開されるが、その様はまるで『うる星やつら』の学園生活を実際に見ているようだ(『うる星やつら』はまさに脇役が重要なキャラ漫画であった)。


 彼らと主人公たちの息の合った応酬も見事だが、それもそのはずで、脇を固めた役者たちには、主役のフェルドスタインと実際に友人だという者も多かったそう。「まるで友達の集まりみたいだった」と彼女も振り返っているが、そんなキャスティングも、本作の最後まで衰えないテンションの高さを支えている。


 かように本作は、キャスティングの重要性を再認識させてくれるが、もう一つ本作最大の勝因と、筆者が考えるものがある。それは、一つの映画にジャンルの異なる映画の演出技法を取り入れ、まとめあげる監督のセンスだ。



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