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『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』青春コメディの傑作を生んだキャスティングの妙と多様な演出

『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』青春コメディの傑作を生んだキャスティングの妙と多様な演出

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ステレオタイプを逆手にとった監督のメッセージ



 本作は、一晩の出来事を中心に描かれているが、これはアメリカ映画の伝統だ。アメリカの青春映画では、ある一夜の出来事によって主人公が成長し、人生の新たなステージに入ることを予感させて終わる、という話形が確立されている。


 古くはジョージ・ルーカスによる『アメリカン・グラフィティ』(73)、先述の『スーパーバッド 童貞ウォーズ』もそうだし、『イット・フォローズ』(14)で注目されたデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督の長編デビュー作『アメリカン・スリープオーバー』(10)もその一つだ。


 芋虫がさなぎとなり、変態し、明け方とともに蝶となる。ティーンエイジャーが「一夜のうちに大人になる」という説話には、そんなイメージが内在しているかも知れない。美しいが、それは「こうあって欲しい」と大人が願う、都合の良いストーリーなのではないか。今までの青春映画の定型を裏切る本作の痛快なラストシーンを見ると、そんな思いにとらわれる。




 それは本作がステレオタイプとも思える青春映画のクリシェを踏襲しながらも、「あー、これは、こういう展開だよね」という観客の思い込みを逆手にとり、多様な表現で新鮮な映画体験を提供することに成功しているからに違いない。


 監督は言う。「本作は、冒険映画だから観客には楽しんでほしいし、きっと思い切り楽しめるはず。そして考えてほしい。他人や自分への理解が足りないんじゃないかと、もっと他人に共感してほしいし、人間の複雑さを受け入れて欲しい」


 定型に安住せず、複雑さを受け入れる、それこそが成長なのだ…。多様にして奥行きのある本作の演出・構造をもって、監督は観客にそんなメッセージを伝えようとしたのではないだろうか。



※参考資料:『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』劇場用パンフレット



文:稲垣哲也

TVディレクター。マンガや映画のクリエイターの妄執を描くドキュメンタリー企画の実現が個人的テーマ。過去に演出した番組には『劇画ゴッドファーザー マンガに革命を起こした男』(WOWOW)『たけし誕生 オイラの師匠と浅草』(NHK)『師弟物語~人生を変えた出会い~【田中将大×野村克也】』(NHK BSプレミアム)。



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作品情報を見る



『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』

2020年8月21日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開

(c)2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.

配給:ロングライド

公式サイト:https://longride.jp/booksmart

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