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『プロメテウス』リドリー・スコット自らエイリアンの世界を復活させた理由と、ギーガーとの思い出
未来はそこまで進化しないという感覚
こうしてギーガーの精神が踏襲された『プロメテウス』ではあるが、メインの舞台が2093年ということで、宇宙船内部などは予見される未来の風景がリアリティとともに描かれている。たとえば乗組員の球形のヘルメットは、スティーヴ・ジョブズが工業用の強度ガラスでオフィスを建てたという話に触発され、デザインされた。この時代に宇宙へ行くなら、360度、軽量で弾丸も通さないガラス製のヘルメットになっている、というわけだ。このあたりも、リドリー・スコットはかつて、1982年の『ブレードランナー』で2019年を描いた感覚と重ねたと語っている。
「『ブレードランナー』で意識したのは、およそ40年先を描くからといって、あまりに未来的にしてはいけないということ。私は30年前のスーツを今も着ているし、車も45年前に買ったものを乗っている。一方であの映画のショーン・ヤングのドレスは、ドルチェ&ガッバーナに影響を与えた。未来を描く映画が、実際に未来のデザインを変えるきっかけにもなるんだ」
『プロメテウス』(C)2017 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
未来のテクノロジーでいえば、最も重要なのがアンドロイドだが、『エイリアン』シリーズを振り返ると、アンドロイドの名前が、アッシュ(1作目)、ビショップ(2&3作目)、コール(4作目)、そしてこの『プロメテウス』ではデヴィッドと、頭文字がアルファベット順になっているのは、作り手の遊び心だろう。時系列的には、デヴィッドがいちばん旧型なのだが。
デヴィッド役のマイケル・ファスベンダーは、アンドロイドを演じるために、『ブレードランナー』のほか、『地球に落ちて来た男』(76)、『召使』(63)、『アラビアのロレンス』(62)を参考にした(実際に劇中ではデヴィッドが『アラビアのロレンス』を観ているシーンも出てくる)。さらに水泳の飛び込みでオリンピック金メダリスト、グレッグ・ルガニス選手の肉体と動きを意識したという。
公開時は何かと批判も目についた『プロメテウス』だが、自身で監督した『エイリアン』1作目にオマージュを捧げる描写や、ペニーワイズによく似た壁画のレリーフ(彼が地球外生命体であると示唆?)など、映画ファンには楽しい発見も多く、改めて観直す価値のある一本だと強く感じる。
リドリー・スコットはこの5年後、『エイリアン:コヴェナント』(17)を完成させ、現在も『エイリアン』シリーズへの野心が衰えず、さらなる新作を準備中であることを明かしている。
文:斉藤博昭
1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。
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