(C)2017 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
『プロメテウス』リドリー・スコット自らエイリアンの世界を復活させた理由と、ギーガーとの思い出
ギーガーのデザインは間に合わなかった
地球上の人類は他者によって“作られた”存在かもしれない。リドリー・スコットがその部分でインスピレーションを受けたのは、スイス人のSF作家、エーリッヒ・フォン・デニケンだったという。
「私は60年代に読んだフォン・デニケンのことを、今でもよく覚えている。当時、マリワナをやっていたせいだ(笑)。彼は写真を使って、他の惑星からの侵入者についてしきりに論じていた。当然のごとく反論も多かったが、たとえばナスカの地上絵などを考えると、フォン・デニケンの論理も説明がつく。セオドライト(角度の計測機器)もない時代に、あのように上空からしか判別できない巨大な絵を描くことは、人間には不可能だったはずだ。しかも自分たちが楽しむためではない。そういったアイデアが、『プロメテウス』のインスピレーションにつながっている」
キリスト教のモチーフを使いながら、フォン・デニケンという、やや胡散くさい評判の作家の理論も参考に、地球外生命体による人類の創造が根本にある『プロメテウス』を、バチカンは公式に批判……などという騒動も起こった。
『プロメテウス』(C)2017 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
そしてスペースジョッキーといえば、『エイリアン』で数々のデザインを手がけた、H・R・ギーガーの作品でもある。ギーガーが亡くなったのは2014年だが、『プロメテウス』に深く関わることはなかった。ギーガー自身、「『プロメテウス』のために何種類かのデザイン画をリドリーに送ったのだが、それらがどの程度、使われたのか自分でもよくわかっていない」と語っている。その経緯を聞くと、リドリーはこのように説明する。
「すでに製作が急ピッチで進んでいたので、ギーガーのデザインを待っている余裕がなかったんだ。それでもスペースジョッキーが横たわる場所の天井部分など、彼の新たなデザインを取り入れた箇所はいくつもある。とはいえ、もともとギーガーのデザインが基盤になっているので、新たなデザインという部分は少ないんだけどね」
リドリー・スコットが『エイリアン』でギーガーと手を組んだのは、アレハンドロ・ホドロフスキー監督による「デューン」の映画化が頓挫したこととも関係している。同作の美術を担当していたのがギーガーで、特殊効果を務めたダン・オバノンが、「デューン」の製作中止によって自作の脚本を完成せたのが『エイリアン』だった。その縁でギーガーも『エイリアン』に参加することになる。「デューン」はその後、デヴィッド・リンチ監督により『デューン/砂の惑星』(84)として映画化されるが、同作の監督には当初、リドリー・スコットが予定されていた。リドリーはプロデューサー側との決裂で降板するという、複雑な因縁もあった。
ギーガーとの出会いについて、リドリーは懐かしそうに語ってくれた。
「ギーガーは飛行機が苦手で私が待つロンドンに来たがらなかった。だから仕方なく彼が住むスイスまで私は足を運び、『エイリアン』への参加を説得したんだ。その後、ようやくロンドンに来てくれて、1年間の滞在でエイリアン、エッグ、チェストバスター、フェイスハガーなどをデザインしてくれた。当時はデジタルに頼れないので、すべて実物を作り、各クリーチャーのアゴの形や、頭をどう操作して動かすのかなど、細かくデリケートな作業を進めたことを今も鮮明に覚えているよ。『ジョーズ』のサメと同じように、いかに見せない方が恐ろしいかを、ギーガーとの一連の仕事で学んだものさ」