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『キック・アス』大手スタジオも難色を示した過激すぎるスーパーヒーロー

(c)Photofest / Getty Images

『キック・アス』大手スタジオも難色を示した過激すぎるスーパーヒーロー

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原作者の青春を切り取る、半自伝的物語



 マーク・ミラーは、業界を代表する人気コミック作家だ。兄のボビーは、マークがまだ4歳のときにコミックを読ませ、マークをコミックショップに連れて行った。マークが最初に読んだコミックは、グウェン・ステイシーの死を描いた名作「アメイジング・スパイダーマン(The Amazing Spider-Man #121, 1973年)」だそうで、マークはその日のうちにスーパーマンのコミックも購入し、彼はコミック・ブックの世界に魅了されていった。


 マーク・ミラーは、自身の作家人生の中で、最も影響を受けた人物をふたり挙げている。アラン・ムーアとフランク・ミラーである。アラン・ムーアと言えば「ウォッチメン」の作者として知られるアメコミ界のレジェンドだ。「ウォッチメン」では、その当時の世相や不安を反映させ、それまでのスーパーヒーローの概念を根底からひっくり返し大胆不敵な物語を描き出した。フランク・ミラーも「バットマン:ダークナイト・リターンズ」の中で、自分の存在意義に苦悩しながら戦うスーパーヒーローを描きあげた。


『ウォッチメン』予告


 どちらも同じ年に出版され、それまで子ども向けの大衆娯楽とされていたコミック文化を、現代的な視点から再解釈し、文学レベルに昇華させた傑作として語られる機会も多い。


 マーク・ミラーは、彼らの作品から多くのことを学び、それらを自らの作品にたびたび反映させてきた。彼らの文学的視点と本来の娯楽性を両立させ、マーベルやDCで幾つかの作品を務めてきたマークは、2004年に“Millarworld(ミラーワールド)”と呼ばれる自身のクリエイター・ラインを立ち上げるまでに成長。ブランドの最初の作品が「ウォンテッド」で、ジェームズ・マカヴォイ、アンジェリーナ・ジョリー主演で映画化もされた。


 ほかにも『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(16)『ローガン』(17)など多くの著作が映画化されている。そんな彼の代表作である『キック・アス』には、彼の自伝的なエピソードが盛り込まれているわけだ。


 マークは、スコットランド中西部のコートブリッジで生まれ育った。高校時代の趣味はやはりコミック・ブックだったが、その当時はまだコミック文化は市民権を得ておらず、コミックにハマることはいまよりもダサいことだったとマークは語る。


 コミック仲間の友だちとコスチュームもデザインしたりして、本気でスーパーヒーローを目指したこともあったという。勉強もスポーツもまるきりダメで、コミック・ブックの世界が唯一の生きがいだった。まさに映画の中のデイヴそのままの青春である。さらにマークは劇中のデイヴと同じように若くして母親を失っている。つまり劇中のデイヴはマーク・ミラーの生き写しであり、この映画はマークの半自伝的なエピソードでもあるのだ。



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