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『キック・アス』大手スタジオも難色を示した過激すぎるスーパーヒーロー

『キック・アス』大手スタジオも難色を示した過激すぎるスーパーヒーロー


過激すぎる内容に大手スタジオも及び腰



 監督のマシュー・ヴォーンは当初、自身の長編初監督作品『レイヤー・ケーキ』(04)を配給したソニー・ピクチャーズに配給を依頼したが、ソニー側からバイオレンス描写のトーンダウンなどを求められた。いまでこそ『デッド・プール』(16)や『ローガン』など“R指定ヒーロー”が評価されてきているが、『キック・アス』の公開当時は、バイオレンス要素がヒットに繋がるなどとは思われていなかった。ましてやスーパーヒーロー映画ならなおさらだ。ヴォーン監督はソニー側の要求を拒否し、再びスタジオ探しがはじまった。


 ほかの多くのスタジオも興味を示したが、彼らが軒並み要求したのは、キャラクターの年齢設定の引き上げだった。特にスタジオ側は、11歳という設定のヒット・ガールに難色を示したという。それもそのはずで、映画の中でヒット・ガールは“Cワード(女性器を示す「Cunt」を使った表現)”の入ったセリフを臆面もなく放ち、屈強な男どもを銃器や刃物でバッサバサとなぎ倒すのだから……。




 大手のスタジオは過激なバイオレンス描写を削り、ヒット・ガールをもう少し大人のキャラクターへと変更するよう条件を付けてきた。スタジオは、暴力的なスーパーヒーロー映画の成功について懐疑的な姿勢を示した。


 もちろんヴォーン監督がスタジオ側の条件を許諾するはずもなかった。脚本も完成していたので、バイオレンス描写を抜きには語れないと悟った監督は、『キック・アス』を独立資金で製作しようと決心する。これにより監督は高い検閲を気にすることなく、自分の思い通りの映画を自由に作り上げる権利を得た。


 しかも心強いことに、あのブラッド・ピットが率いるプランBエンターテインメントが製作に名乗りを上げ、原作者のマーク・ミラーとジョン・ロミータ・Jrも映画の製作に協力した。ブラッド・ピットが資金面で援助をし、原作者のふたりは製作総指揮としてヴォーン監督を支えた。


 特にロミータ・Jrは、ニコラス・ケイジ扮するビッグ・ダディの過去を紹介するコミック・ブック風のアニメーション・シークェンスで作画を担当。この一連のシーンには制作に約2年の歳月を要したという。


 いよいよすべての編集が終わり、完成品を大手のスタジオに見せたところ、アメリカのライオンズゲートとイギリスのユニバーサルが配給に同意。封切りされるやいなや口コミで話題となり、世界各国で上映され、続編が製作されるほどの熱狂ぶりとなった。2018年には、ヴォーン監督がシリーズをリブートする意向を表明している。そちらも非常に楽しみなところである。



参考:映画『キック・アス』劇場用プログラム



文: Hayato Otsuki

1993年5月生まれ、北海道札幌市出身。ライター、編集者。2016年にライター業をスタートし、現在はコラム、映画評などを様々なメディアに寄稿。作り手のメッセージを俯瞰的に読み取ることで、その作品本来の意図を鋭く分析、解説する。執筆媒体は「THE RIVER」「IGN Japan」「リアルサウンド映画部」など。得意分野はアクション、ファンタジー。



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(c)Photofest / Getty Images

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