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『エンゼル・ハート』アラン・パーカーの世界観に染まる、ミッキー・ロークの悲哀

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『エンゼル・ハート』アラン・パーカーの世界観に染まる、ミッキー・ロークの悲哀

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『エンゼル・ハート』あらすじ

謎の人物からの依頼により、失踪した人気歌手の行方を追うブルックリンの私立探偵。だが、彼の行く先々では奇怪な殺人が続発、彼は、思いがけない真実にたどり着く…。


Index


アラン・パーカー監督がめざしたふたつのジャンルの融合



 アラン・パーカー監督のスタートはコマーシャルの台本書きだった。映画で最初に手掛けた脚本は『小さな恋のメロディ』(71)。そんな経歴ゆえ、「書くこと」にこだわりがあるようだ。すべての監督作のシナリオを自身で手がけているわけではないが、『エンゼル・ハート』(87)は自分で脚本まで手掛けた。ウィリアム・ヒョーツバーグの原作(「堕ちる天使」日本版は早川文庫刊)が78年に出た時から、この作品の映画化に興味を持ったが、すぐに彼のところに話がきたわけではない。


 「何年もの間、映画化権はいろいろな人々の間をたらまわしになっていた。どうやら、ロバート・レッドフォードのところにも行ったようだが、彼はあきらめてしまったようだ」パーカー自身が作ったサイト、“アラン・パーカー・コム”に掲載されたプロダクションノートにはそんな記述がある。「やさぐれた雰囲気の主人公ハリー・エンゼルが、伝統的なアメリカのヒーローであるロバート・レッドフォードのイメージにそぐわなかったせいではないだろうか」パーカーはそう書いている。


 パーカー監督のところに映画化の話がめぐってきたのは85年のこと。製作者のエリオット・コストナーが英国のスタジオ・パインウッドでパーカーと食事をした時、原作本を机に上に差し出したという。パーカーは、もちろん、そのチャンスは逃さなかった。


『エンゼル・ハート』予告


 「この映画ではふたつのジャンルが融合できると思った。ひとつは(レイモンド・)チャンドラーを思わせる古典的な探偵物語、もうひとつはスーパーナチュラルの世界だ」(製作者のコストナーはチャンドラーの小説の映画化『さらば愛しき女よ』(75)の製作者でもあった)。


 舞台は1955年で、主人公はニューヨークの私立探偵、ハリー・エンゼル。彼はルイ・サイファーという謎めいた男に、12年前に人気歌手として知られたジョニー・フェイヴァリットの生死を確かめてほしい、と依頼を受ける。そこでハリーがジョニーと関係があった人物たちに会いに行くと、彼らは次々に何者かに襲われる。


 原作はニューヨークだけが舞台になっているが、映画化において、前半はニューヨークを舞台にしつつ、後半はニューオリンズに場所を移した。前述のサイトによれば、数多くの映画がニューヨークを舞台にしているため、鮮度がないと思い、別のロケ地を考えたようだ。そんな彼のもくろみが見事にはまり、どこか湿り気のあるニューオリンズの街が、この映画のおどろおどろしい雰囲気を盛り上げる。パーカー自身が脚本まで手がけることで、原作とは少し趣の異なるホラー&ハードボイルドの世界観が作られていった。



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