(C)2017 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
『L.A.コンフィデンシャル』娯楽と芸術を高い水準で成立させた、傑作フィルム・ノワール
2020.11.04
あらゆる要素が水準を超えた奇跡の一作
そして、本作の物語のラストシーンでは、ロサンゼルスを去る人物と街に残る人物が対比される。やはり悪徳の街に住む者は、どうしても悪に手を汚さなければならない。そして逆に、純粋な存在は淀んだ水には棲むことはできないのだ。この対照的な存在は、別れる前に熱くお互いを見つめ合う。二人がともに悪と戦った瞬間、間違いなく正義はそこにあった。
ロサンゼルスに残ることを決めた登場人物は、去ってゆく乗用車を眺めながら寂しい表情を見せるが、最後には上を向く。この演技が、悪が蔓延る世界を描いてきた本作の、一筋の希望となるのだ。ロサンゼルスは、やはり夢を見ることのできる場所でもある。
『L.A.コンフィデンシャル』(C)2017 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
『L.A.コンフィデンシャル』は、このように様々な部分で優れた技量や熱意が発揮された映画だ。もちろんそれは、この作品に関わった者たちの力に他ならないが、それでもここまで各々が際立ったものになったというのは、奇跡的なことではないだろうか。
そして、それらが合わさった本作は、職人的でありながら芸術的な領域に届き得ている。まさに、“映画は総合芸術である”ことが再認識できるケースである。フィルム・ノワールは、本作の舞台になった時代に隆盛し、人気を集めたジャンルだ。しかし、90年代以降にも芸術作品と呼べるまでの水準のノワール作品が作られたという事実は、大人の娯楽と芸術を求める現在の映画ファンにとっては、紛れもない希望となっている。
文: 小野寺系
映画仙人を目指し、さすらいながらWEBメディアや雑誌などで執筆する映画評論家。いろいろな角度から、映画の“深い”内容を分かりやすく伝えていきます。Twitter: @kmovie
『L.A.コンフィデンシャル』
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