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『L.A.コンフィデンシャル』娯楽と芸術を高い水準で成立させた、傑作フィルム・ノワール

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『L.A.コンフィデンシャル』娯楽と芸術を高い水準で成立させた、傑作フィルム・ノワール

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※本記事は物語の結末に触れているため、映画をご覧になってから読むことをお勧めします。


『L.A.コンフィデンシャル』あらすじ

50年代のロサンゼルス。ダウンタウンのカフェで元刑事を含む6人の男女が惨殺される事件が発生した。ロス市警のダドリー・スミス警部の指揮のもと、刑事たちは捜査に動き出す。殺された刑事の元相棒バドは殺された女と一緒にいた謎の高級娼婦、リンに接近する。華やかなスター刑事のジャック、野心家の若手刑事エドも参戦、事件は解決したかに見えたが三人は予想もしなかった巨大な陰謀に巻き込まれていく……



ノワール映画『L.A.コンフィデンシャル』は、公開当時から高い評価を集めた1997年の名作だ。アカデミー賞では作品賞の最有力とされながら、脚色賞と助演女優賞(キム・ベイシンガー)2部門の受賞にとどまり、『タイタニック』(97)の後塵を拝する結果となったが、批評家筋の圧倒的な評価を得て、全米映画批評家協会賞をはじめとして、おびただしい数の賞を獲得したこと。この結果は日本公開時にも盛んに宣伝され、話題となった。


いまも映画ファンに語り継がれている魅力と、凄まじい評価の高さの理由はどこにあったのだろうか。じっくりとその内容を振り返って解説していきたい。


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こだわり抜いたL.A.ノワール世界



 原作は、「アメリカ文学界の狂犬」と渾名(あだな)されるジェイムズ・エルロイの書いた、L.A.(ロサンゼルス)の裏社会を舞台とする犯罪小説。本作で賞賛を浴び、後にエミネム主演作『8 Mile』(02)を撮ったことでも知られるカーティス・ハンソンが監督を務め、『ミスティック・リバー』(03)や『グリーン・ゾーン』(10)の脚本家ブライアン・ヘルゲランドが、ハンソンと共同で脚色をしている。


 舞台となるのは、公権力の不正やギャングの殺害事件が横行する、1950年代のロサンゼルスの街。元警官を含む複数の惨殺死体が、ダウンタウンのカフェで発見される「ナイト・アウル事件」が発生し、この裏に隠された意外な真相に3人の刑事が迫っていくという内容だ。はじめはダニー・デヴィートが語り部役を演じ、登場人物の一人としても現れるが、途中からナレーションをする任を降りるという、意表をつく趣向もある。


『L.A.コンフィデンシャル』予告


 本作が名作となったのは、映画を構成する様々な要素において、それぞれに水準を超える仕事が達成されているからである。例えば、作品を音楽で盛り上げるのは、アカデミー賞常連の映画作曲家ジェリー・ゴールドスミス。ハードボイルドで哀愁漂うブラスセクションの音色や、緊張感ある場面では、ピアノの激しい旋律が前に出るサスペンスフルなスコアによって、本作の雰囲気をリッチにし、格を上げている。


 さらに、50年代のロスを再現する美しい美術も見ものだ。高級住宅地や貧困層の住むエリアの雰囲気、凄惨な事件とともに描かれるショービジネスの世界やパーティーの華やかな様子が、くすんだトーンで映し出される。こういったこだわりによってかたちづくられた、総合的な完成度の高さが、この作品をただならぬものにする土台を作っているといえよう。



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