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『チェンジリング』クリント・イーストウッド映画における、糾弾される国家権力

(c)Photofest / Getty Images

『チェンジリング』クリント・イーストウッド映画における、糾弾される国家権力

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アンジェリーナ・ジョリーが演じる、女性版ダーティ・ハリー



 当初主人公のクリスティン・コリンズ役には、ヒラリー・スワンクやリース・ウィザースプーンの名前が検討されていた。特にヒラリー・スワンクは、イーストウッド監督・主演作『ミリオンダラー・ベイビー』(04)でマギー役を演じ、アカデミー主演女優賞を獲得した実績もあった。しかしプロデューサーのロン・ハワードは、アンジェリーナ・ジョリーの起用を提案する。彼女のクラシカルな顔立ちが1920年代後半という時代によく合う、と考えたからだ。


 クリント・イーストウッドも、「一人の母親でもある彼女ならば、自分の子供が誘拐されてしまったらどのように感じるか、的確に表現できるだろう」と、その提案に同意。だが当のアンジェリーナ・ジョリーは、最初このオファーを断ってしまう。愛情を込めて育てた子供がある日当然誘拐されてしまう、という筋書きが彼女にはあまりに重すぎたからだ。しかし、この映画は今までの出演作にはないチャレンジングな企画であると思い直し、並々ならぬ覚悟で出演を決断する。



『チェンジリング』(C) 2008 UNIVERSAL STUDIOS.All Rights Reserved.


 この映画をご覧になった方は全員同意してくれるものと思うが、腐敗し切った警察機構に真っ向から対立し、息子を救済すべく奔走するアンジェリーナ・ジョリーの姿は、もはやダーティ・ハリーだ。精神病院で出会った元売春婦に「時には使うべき言葉を使わなくては」と諭されて、警察とグルの医院長に「クソ食らえ!」と言い放つシーンは、女性版ハリー・キャラハンとしての面目躍如だろう。


 本家本元イーストウッド演出のもと、アンジェリーナ・ジョリーは個人の自由と尊厳を著しく傷つける警察機構を糾弾し、“本当の正義”を執行すべく奮闘するのだ。



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