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『グラン・トリノ』イーストウッドだからこそ果たし得た“次世代への継承”と“贖罪”の物語 ※注!ネタバレ含みます。

(c)2009 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

『グラン・トリノ』イーストウッドだからこそ果たし得た“次世代への継承”と“贖罪”の物語 ※注!ネタバレ含みます。

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※本記事は物語の結末に触れているため、映画をご覧になってから読むことをお勧めします。


『グラン・トリノ』あらすじ

妻に先立たれ、一人暮らしの頑固な老人ウォルト。人に心を許さず、無礼な若者たちを罵り、自宅の芝生に一歩でも侵入されれば、ライフルを突きつける。そんな彼に、息子たちも寄り付こうとしない。学校にも行かず、仕事もなく、自分の進むべき道が分からない少年タオ。彼には手本となる父親がいない。二人は隣同士だが、挨拶を交わすことすらなかった。ある日、ウォルトが何より大切にしているヴィンテージ・カー<グラン・トリノ>を、タオが盗もうとするまでは――。


ウォルトがタオの謝罪を受け入れたときから、二人の不思議な関係が始まる。ウォルトから与えられる労働で、男としての自信を得るタオ。タオを一人前にする目標に喜びを見出すウォルト。しかし、タオは愚かな争いから、家族と共に命の危険にさらされる。彼の未来を守るため、最後にウォルトがつけた決着とは――?


Index


イーストウッドが初めて銃弾に倒れた映画



 クリント・イーストウッドは、不死の肉体を有している。『奴らを高く吊るせ!』(68)で長時間首を吊るされようとも、『ガントレット』(77)で彼が乗る大型バスが蜂の巣状態にされようとも、『ペイルライダー』(85)で6発もの銃弾を浴びようとも、彼は必ず死の淵から生還する。どう考えてもお話の辻褄は合わないのだが、そんなモンはガン無視!死なない男=イーストウッドの活躍をスクリーンで見届けることこそが、我々映画ファンに与えられた特権なのである。


 しかし、2008年に公開された『グラン・トリノ』は、ひとつの事件だった。なぜなら、イーストウッド映画史上初めて、彼が銃弾に倒れた映画となったからだ(*)。イーストウッドのファンを公言している映画監督の黒沢清は、その衝撃をこんな風に語っている。


 『グラン・トリノ』は、ワンカットごとに動揺してしまって冷静には見られませんでした。もちろん感動したのですが、それよりも痛ましいというか…。そのひとつの理由は、最後に銃弾を胸に受けるのですけど、それを見た瞬間に、「この人は何度も胸に銃弾を受けている」と思ったからなのです。(中略)だけど今回だけはどうも本当に死んでしまったらしい。もちろん劇中の人物の話なのですが、監督が主演しているということで、作者と主人公が同時に死んでしまったような、そういう取り返しのつかない失望感を経験しました。

ユリイカ クリント・イーストウッド特集より抜粋)


『グラン・トリノ』予告


 黒沢清が語るところの「失望感」は、イーストウッド映画を見続けてきた者ならば誰しもが味わう感覚だろう。それぐらい、イーストウッド演じる主人公とイーストウッド自身を、我々は同一視してきた。彼の葬式で物語の終幕を迎える日が来るなんぞ、誰が想像しただろうか?


 だが、その死は必然だった。『グラン・トリノ』は、クリント・イーストウッドの“次世代への継承”と“贖罪”の物語なのだから。


(*)参考:https://www.imdb.com/title/tt1205489/trivia?item=tr2943675



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