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『レザボア・ドッグス』タランティーノを貫くヤクザ映画のスピリット ※注!映画の結末に触れています。

© Photofest / Getty Images

『レザボア・ドッグス』タランティーノを貫くヤクザ映画のスピリット ※注!映画の結末に触れています。

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貫かれた映画人としての妥協なき仁義



 様々な要素を詰め込んだ『レザボア・ドッグス』は、あらゆる個性的なキャラクターを散りばめながら、実はその核心部分にはホワイトとオレンジとの、盃は交わさずとも自ずと育まれていった仁義を描いた物語だった。この何が起ころうとも相手のことを信じる関係性あってこそ、本作は得も言われぬ人間ドラマとしての凄みを身にまとい、発火ミスというトラブルをも凌駕するほどの圧倒的な存在感を手に入れることができたに違いない。


 思えば『レザボア・ドッグス』に影響を受け、そのスタイルを真似た映画やドラマも数多い。だが、たとえそれらが似ていたとしても、タランティーノが描きたかった「仁義」を理解していなくては、それはオマージュにも満たない、全くの自己満足の別物でしかありえない。



『レザボア・ドッグス』© Photofest / Getty Images 


 『レザボア・ドッグス』の面白さの一つは、全く違う国の、別ジャンルの映画かと思いきや、そこにかくも色濃くしっかりと日本のヤクザ映画への熱い想いが溢れ出ているところである。仮にこれがインディペンデントでなくメジャー映画として製作されたとしたら、彼が最も大切にしたかった「仁義」が骨抜きにされ、米国人にも理解可能な分かりやすい筋書きに変わり果てていたかもしれない。


 その点、タランティーノは一切信念を曲げなかった。彼の作る映画はいつも、自らが受けた影響を赤裸々なまでに発露させ、決して付け焼き刃ではなく、その精神的な部分を深く、大切に描きこむことを忘れない。それこそが彼なりの映画人としてのケジメのつけ方。honor以上、humanity未満の、「仁義」なのだ。


 『仁義なき戦い』の封切りから45年以上、『レザボア・ドッグス』から25年以上が経った。深作欣二も、菅原文太、金子信雄、松方弘樹、渡瀬恒彦もすでに故人となって久しい。さらにはローレンス・ティアニーやクリス・ペンも亡くなった。だが、彼らは作品の中でずっと生き続けるし、真に面白いものは決して古びることがない。時代を超えて人々の心を震わせ、魅了し続ける。我々もそこに一貫して流れる熱い血潮を感じつつ、仁義みなぎるこれらの傑作群をいつまでも、何度でも、味わいたいものだ。



文: 牛津厚信 USHIZU ATSUNOBU

1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンⅡ』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。



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