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『ミッドナイト・スカイ』ジョージ・クルーニーが今の自分を作品に投影した、未来とは思えない現実味

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『ミッドナイト・スカイ』ジョージ・クルーニーが今の自分を作品に投影した、未来とは思えない現実味

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クルーニーが撮りたかった理由



 地球に起こった大変動によって強力な放射線が人々を直撃、すべての人間の命がそれによって奪われた。この前提の上に物語は成り立っている。地球の温暖化がこれほど深刻化する数年前は、このような設定は近未来SFのよくある導入部として、何の疑問も持たず受け入れられてきた。しかし、クルーニーは言う。「これはサイエンス・フィクションなんかじゃない。残念ながら日を追う毎に現実味を帯びている目の前の危機を描いている。環境破壊、憎しみと分断、戦争、それらが今の社会に浸透してしまっている。果たして、この状態がこのまま続くと30年後の地球はどうなっているのか? それが、この映画の問題提起なんだ」


 クルーニーは現実的な具体例として、トランプ政権がもたらしたアメリカの分断や、フィリピンのドゥテルテ政権によるメディア弾圧、ハンガリーのオルバン首相による強権統治を挙げる。特に、反EUを掲げ難民の受け入れを頑なに拒否するオルバン首相の政策などは、これまでもクルーニーは度々批判してきた。両者の攻防はハンガリーのメディアにも取り上げられたほどだ。つい先日も、オルバン批判を展開したというクルーニーは、それを”政治とショービジネスの奇妙な交流”と表現する。



『ミッドナイト・スカイ』Philippe Antonello/ NETFLIX


 一方で、クルーニーの妻で人権派弁護士として知られるアマル・クルーニーは、ドゥテルテ大統領と対立しているフィリピンの著名なジャーナリスト、マリア・レッサ氏の弁護団に加わり、報道の自由と人権を死守するための支援を続けている。クルーニー夫妻の食卓で最近話題に上るのは、決まって”レッサ事件”に纏わるあれこれだという。つまり、社会が抱えている問題から目を背けず、怒りや疑問を行動に移すことが、クルーニー夫妻のライフワークなのである。


 また、さらに予期せぬ出来事が起きる。COVID-19が猛威を振るい始めたことで、ハリウッドのスタジオは機能停止を余儀なくされ、ロサンゼルス近郊で発生した大規模な山火事は、大地を焼土に変えてしまった。これらを体験したことで、クルーニーはすでに完成していたフィルムに手を加えることとなる。


 こうして、映画『ミッドナイト・スカイ』は、やがて訪れるかもしれない、否、このままだと必ずやって来るであろう近未来の地球の姿を提示すると同時に、愛する者同士が側にいられない状況を描き、予言めいた付加価値を持つことになるのである。



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