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『エルム街の悪夢』フレディ・クルーガーがもたらした大成功とは

(c)Photofest / Getty Images

『エルム街の悪夢』フレディ・クルーガーがもたらした大成功とは

 

 ウェス・クレイブン監督のデビュー作『鮮血の美学』(72)。映画序盤、道路脇の木に打ち付けられた手書きのサインが映る。


 「Lake Ends in Road」


 「湖までで道が行き止まり」の意味なら「Road ends in lake」が正しい文法なので、これだと「湖が道までで行き止まり」の意味になってしまう。この文法を間違えたサインたった1つのせいで、言葉がまともに通じない野蛮さがスクリーン内の世界に立ち込めてくる。これはクレイブン監督が意図した、計算尽くの結果である。



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『エルム街の悪夢』誕生



 1970年代後半から80年代にかけて、東南アジアからカリフォルニアに移住したモン族の健康な若者たちが「寝たら死ぬ」という考えに取り憑かれてしまう。ある両親は5日間寝ない息子を想い、食べ物に睡眠薬を混ぜて寝かせたところ、翌朝になって本当に死んでしまったそうだ。この現象は最終的に100人を超える健康なモン族の若者を死に追いやり「モン族突然死症候群」という言葉まで生んだ。


 彼らの多くはベトナム戦争時に、北ベトナム軍に対抗するため訓練された兵士たちだったため、戦争時に受けたトラウマ:PTSDの影響であるとか、東南アジアの湿地とは違ったカリフォルニアの乾いた気候や、見知らぬ国での生活への不安、などなどが原因として取り沙汰された。しかし、明確な理由は結局解らないままだった。この現象は、アメリカで生まれた新しい世代のモン族には出なかったため、収束した。


 ウェス・クレイブンがこの不思議な現象を知った時に頭に浮かんだのは、子供の頃に2階のアパートの窓から見えたソフト帽の男だった。


 夜中にふと目が覚めてしまった、まだ10歳にもなっていないクレイブン少年が、何の気なしに窓の外に目線を移すと、通りの向かいに立つソフト帽をかぶった男と目が合ったそうだ。ギョっとしてベッドに潜り、しかし眠れるワケもなく、充分に時間が経過してからコッソリと隠れながら窓の外を見ると、その男はまだ立っていて、しかもコチラの窓を見つめたままだった。


 見られているのを知ってか知らでか、男はゆっくり歩きだし角を曲がって消えていった。しかし、角の向こうにはクレイブン少年の住むアパートの入り口があった。


 すっかりパニックになり家族を起こしての大騒動になったが、男が押し入ってくることも無く、平穏にことは終わった。ただ、クレイブン少年はその夜、眠れなかったそうだ。おそらくソフト帽の男は酔っ払いか何かで、ふと目の合った少年を怖がらせようとサディスティックないたずら心が芽生えただけだったのだろう。


 ウェス・クレイブンはこれらにアレンジを加え「寝たら襲ってくるソフト帽の殺人鬼」の脚本を書き上げる。




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