2021.01.14
CGの”羽根”が空から舞い降りるオープニング
かくも本編を享受する前から期待値が上がりっぱなしだった本作。この映画は1985年に出版された小説がベースとなっている。ゼメキス監督自身「非常にアメリカ的な映画であり、アメリカの歴史にまつわる映画」と語っている通り、原作にもアメリカ現代史のエピソードがてんこ盛り。しかしこれらは決して映画化に適した構成を持つものではなかった。
それらを2時間半のうねるようなヒューマンドラマとして練り上げるには、もうひとつ核となる画期的な柱が必要ーーー。この点を鑑みて本作を生まれ変わらせたのが、本作でオスカーを受賞した脚本家、エリック・ロス(『インサイダー』(99)『ベンジャミン・バトン』(08)『アリー/スター誕生』(18)『DUNE』(21)など)である。
例えば、フォレストとジェーンを巡るラブストーリーの要素を本作の主軸に据えたのもロスのアイディアだったとか。そこを土台に、ロバート・ゼメキス監督がさらなる味付けを加える。バス停にて、フォレストの口から時系列で語られる昔話が「中盤で現在に追いつく」という展開もゼメキスによる発案だとか。そこからはフォレストがバス停を飛び出し、観客と同じ歩調、同じ目線で、クライマックスを切り開いていくというわけだ。
『フォレスト・ガンプ/一期一会』(C) 1994, 2019 Paramount Pictures.
また、この映画を彩る「羽根」という要素を思いついたのもエリック・ロスだったとか。本作には幼い頃のジェーンが 「鳥のようにどこか遠くへ行きたい」と口にする場面がある。ここだけ取ってみれば「羽根=ジェーン」なのだろうが、ゼメキス監督はこれをオープニングでふわりと上空から飛来させ、ジェーンにとどまらない、映画全体の象徴として用いることを決めた。
CGで描かれた羽根は、決して我々の胸を瞬時に鷲掴みにするようなものではない。だが、映画を見直せば見直すほど、全体を束ねるポイントとして実に巧妙に機能していることにじわじわと気づかされる。なぜなら、本作の登場人物は、ジェーンも、フォレストも、それからダン小隊長も、誰もが運命に翻弄されながら右へ左へと漂い、最後は本に挟むしおりのように、収まるべきところへ収まっていった人たちだからである。
ゼメキスはこういったところにCGを用いるのが本当に上手い。ある意味、そこに命をかけているように思えるほどだ。