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『セブン』のデヴィッド・フィンチャーである重要な意味『ゲーム』※注!ネタバレ含みます。

『セブン』のデヴィッド・フィンチャーである重要な意味『ゲーム』※注!ネタバレ含みます。


実は『セブン』よりも前に作られる予定だった作品『ゲーム』



  ※さて、ここからはネタバレします。ご注意ください。未見の方はできれば『ゲーム』を観てみてください! 


  果たして「ゲーム」とは何なのか? そしてゲームを主催する謎めいた会社“CRS”の正体は? もう答えを明かしてしまおう。実は「ゲーム」には裏の意図もなければ陰謀もない。ただ本当に、弟コンラッドからの誕生日プレゼントなのである。ゲームの参加者は、知らず知らずのうちにCRS社が用意するシナリオのイベントに放り込まれる。最終的なゴールは、まるで映画のようなスリリングな体験を経て、ギリギリまで追い詰められたところで「ドッキリでした!」と種 明かし。そしてそのまま楽しい誕生パーティーになだれ込むのである! 


 主人公のニコラスは車ごと海に落とされたり、銃撃から逃げ回ったり、拉致されてメキシコの墓地に埋められたり(このシーンはペキンパーの『ガルシアの首』へのオマージュ)、次々ととんでもない目に遭うのだが、実はすべてがCRS社の仕込みなのだ。劇中では描かれないが、きっと大事に至らないように海の中にはダイバーが待機していただ ろうし、銃撃と思われたのはCRSのスタッフが事前に仕込んだ弾着で、危険を感じていたのはゲームの参加者であるニコラスだけだったのである。 


 この壮大などんでん返し、いや「〇〇と見せかけて実は××」がどんでん返しだとするなら、「〇〇が××だと見せかけて実はやっぱり〇〇!」という“どんでん返さず”が成立したのは、前述した通りフィンチャーが『セブン』の監督であったことに負うところが大きい。 


 実は『ゲーム』は、『セブン』よりも前に作られる予定だった。ところがブラッド・ピットの都合がついたことで先に『セブン』を撮ることになり、『セブン』が大ヒットしたおかげで『ゲーム』は当初の予算を超えるスケールで映画化されることになったという。 


  フィンチャーは『セブン』で組んだ脚本家アンドリュー・ケヴィン・ウォーカーを引き込み(ノークレジットで)シナリオのリライトを依頼する。ウォーカーの参加でどこまで内容が変わったのかはわからないが、ウォーカーの作風から考えてダークスリラーの要素が強まった、と考えるのが一番わかりやすい。 


  ところが、である。『ゲーム』という作品においてスリラーはあくまでも導入でしかないのだ。観客は次第に「なにかがおかしい」と感じ始める。違和感の正体は「スリラーと思っていたのに、なんだかバカっぽくなってきたのでは?」という愉快な戸惑いでもある。メキシコに埋められていたという展開もブッ飛んでいるが、戻ってきたニコラスが反撃に転じ、CRSに雇われた男に「今は私が危険なのだ!」と脅す時のテンションは、マイケル・ダグラスの名演も相まって可笑しさがこみ上げる一幕だ。 


 実際のところ、『ゲーム』はスリラーというより限りなくコメディに近い。緊迫感を煽って煮詰めていったその先に、「ビビったでしょ!でも本当にお誕生日プレゼントでしたよ!」というオチが待ち受けているのだから。そのネタばらしの瞬間にマックスの驚きを持ってくることが監督の腕の見せ所。そのためにフィンチャーは、おそらく自分が『セブン』というセンセーショナルなダークスリラーを撮ったという事実すらも利用している。少なくとも観客は、『セブン』を撮った監督の作品だという先入観のおかげで、随所に散りばめられたコミカル要素からつい目を背けてしまうのである。



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