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『トータル・リコール』4Kデジタル・リマスターで観直す圧倒的な特殊効果

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『トータル・リコール』4Kデジタル・リマスターで観直す圧倒的な特殊効果

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細心の注意がはらわれた、特殊効果の再現



 また今回、スタジオカナルとハイベンティ社の復元チームは、特殊効果ショットの保持と再現に注意を払ったという。制作当時はまだ映画におけるCGIの黎明期であったため、火星のビジュアルに代表されるテクニカルショットは、多くを現物で創造しなければならなかった(*)。そのためにミニチュアやマットペインティング、フルスケールのスタジオセットのほか、全てを高度なプラクティカル・イフェクツ(実在効果)で創り出すことになる。4Kデジタル・リマスター版では、そうしたアナログ特撮の粋を尽くした痕跡を、改めて発見することができるだろう。


 特にミニチュアプレートと実景プレートとのオプティカル(光学)合成は、視覚効果ファシリティのドリーム・クエスト・イメージズが開発した「リアルタイム・モーションコントロールシステム」が活用されている。



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 同システムはモーショントラッキング機能によって、カメラの動きを含んだプレートどうしを合成することができる。仕組みはまずスタジオ撮影用のクレーンに、コンソール制御可能なモーション・コントロールのフィルムカメラを取り付け、クレーンの可動部にはエンコーダー(回転角や直線変位を検出するセンサー)を装着。加えて撮影ステージの様々な位置にビデオカメラを設置し、メイン機となるフィルムカメラに反射マーカーを貼り、下向きのビデオカメラは床の、そして横向きのビデオカメラは壁に作ったグリッド(格子)を記録し、クレーンカメラと同期して撮影すれば、動きの軌跡を得ることができる(ビデオカメラには現場のライティングに影響しないよう、独自の光源が用意されている)。


 それら各種カメラの軌道を分析することで得たマッチムーブ(同期)データを、ミニチュア撮影ステージのモーション・コントロール・カメラに反映させ、動きのある合成ショットを作り出すことを可能としたのである。これにより作成された本編ショットは、例えば主人公クエイド(シュワルツェネッガー)が自身のホログラム映像を起動させ、対峙するところや、火星長官のコーヘイゲン(ロニー・コックス)がオフィス内を歩きまわるさい、それに合わせて窓外の風景の角度も変わるところで確認することができる。



 これらを徹底しなければならなかったのは、機動的なカメラワークを自流とするバーホーベンのこだわりによるもので、彼は常に画面が動いている合成ショットを欲しがり、固定された画像を使用しないようにしたという。 


 加えて先述の合成ショットは35mmフィルムを横に送り、撮像面積を二倍とる「ビスタビジョン」で各素材のプレートが作られている。目的は合成プロセスにおいて、映像を重ねて画質が粗くなるのを軽減するためで、その成果として合成ショットも一定のクオリティを保っている。しかし4Kデジタル・リマスター版では、ダイレクトにカメラで捉えたショットと、合成処理を経たショットとの画質差をもつぶさに再現しており、観る者にあえてこうしたムービーマジックへの認識をうながしていく。


 またミニチュアセットと、動くカメラワークに合わせたライブアクションとの合成も見事で、ここでは後者のプレートを、前者に空けられた小さなスクリーンに投影する合成手法「リア(後方)&フロント(前方)プロジェクション」が用いられている。具体的な完成場面を挙げると、火星に到着したクエイドが列車で移動中、窓越しの彼の姿が移動と共に小さくなっていくショットや、彼とメリナ(レイチェル・ティコティン)が火星の山腹に放り出され、減圧作用によって地表でもがき苦しむショットなどがそれだ。


(*):一部、保安検査機のショットやリコール社員がマニキュアの色を変えるショットに、初期のCGが用いられている。




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