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『ゲッタウェイ』サム・ペキンパーが手がける、壊れかけた夫婦のラブストーリー

©2007 Warner Entertainment Inc. All rights reserved.

『ゲッタウェイ』サム・ペキンパーが手がける、壊れかけた夫婦のラブストーリー

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マックイーンが放つ「男らしさ」とは



 ニューランドとは対照的に、『ゲッタウェイ』のマックイーンを、男らしさの欠如という点で批判する者もいる。1975年に出版された『恋する男たち BOYS IN LOVE』(八曜社)で、今野雄二は俳優としてのマックイーンのセクシーさを絶賛しながらも、ペキンパーと組んだ『ジュニア・ボナー/華麗なる挑戦』(72)および『ゲッタウェイ』への苦言を呈す。この2本の映画には、いつものマックイーンのむせかえるような男臭さがまるで感じられないというのだ。その嘆きに困惑した。「男の映画」の巨匠であるはずのペキンパーが男臭さを映すのに失敗した? いったい『ゲッタウェイ』はマチズモを象徴する映画なのか、そうではないのか?


 映画『ゲッタウェイ』は、ペキンパーのフィルモグラフィのなかでも大きな商業的成功を収めた作品だ。夫婦役を演じたスティーヴ・マックイーンとアリ・マッグローが共演を機に結婚したことでも話題となった(ふたりはのちに離婚)。原作はジム・トンプスンの小説。しかしトンプスン自身による脚本第一稿が「あまりに暗すぎる」という理由で却下される。ウォルター・ヒルがその脚本を継ぎ、出来上がった映画からは原作の持つ陰惨さ、救いのなさはほぼ消え去り、ラストシーンもハッピーエンドに改変された。



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 マックイーンが演じるのは、銀行強盗の罪で刑務所に収監中のドク・マッコイ。刑務所暮らしに耐えきれなくなったドクは、妻のキャロルを通じて、地方政界の実力者ベニヨンに取引を持ちかける。自分を釈放してもらう代わりに、ベニヨンの強盗計画に手を貸そうというのだ。出所後、キャロルと再会したドクは、仲間のルディ、ジャクソンと共に、ある地方銀行を襲撃する。だが無事金を手に入れた直後、ルディはジャクソンを殺し、ドクにも銃を向ける。ルディの裏切りを察していたドクは逆に彼に銃弾を撃ち込むと、約束の金を支払いにベニヨンを訪ねる。だがそこで妻がベニヨンと関係を持っていたという衝撃の事実を知らされる。指名手配されたドクとキャロルは逃避行を続けるが、彼らの間には、ベニヨンとの過去をめぐる確執が残ったまま。そんなふたりを、辛くも死を免れたルディが、復讐に燃え、追いかける。


 物語だけを見れば、れっきとした犯罪映画。派手な爆発や銃撃シーン、カーアクションが、ペキンパーお得意のスローモーションを駆使して存分に描かれる。だが、刑務所から出たドクが次の仕事(銀行強盗)に取り掛かるまでの間のドラマは、まるでロマンス小説のよう。刑務所から出たばかりのドクはどこか自信なさげで、キャロルとの間にも一定の距離をとっている。他のマックイーン主演の映画なら、家に帰りついた瞬間、妻を裸にし、その筋骨隆々の腕に抱き寄せるだろう。ドク・マッコイはそうはしない。一緒にベッドに腰掛けた後、彼はこう告白する。今の自分は君を満足させられるかわからないと。長い刑務所暮らしは、男としての自信を喪失させてしまったのだ。しょげかえる夫に、キャロルは、私に任せていれば大丈夫だと力強く励まし、ふたりはようやくベッドの上に倒れ込む。翌朝、すっかり上機嫌となったドクはキッチンでふたり分の朝食を用意している。その姿は、ハードボイルドとはかけ離れたものだ。




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