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『パーフェクト・ワールド』ケヴィン・コスナーとクリント・イーストウッド、師弟関係を構築できなかったふたりの確執
2021.02.18
『パーフェクト・ワールド』あらすじ
1963年アメリカ。テキサス及びアラバマ州全土に敷かれた緊急捜査網をかい潜って、脱獄犯ブッチ・ヘインズは、8歳の少年フィリップを人質に逃亡を続けていた。物心ついたころから刑務所の壁と向き合って生きてきた孤独な男ブッチの犯した罪は、脱獄、誘拐、殺人にまでエスカレートしていた。追跡するテキサス州警察署長、レッド・ガーネットはブッチを初めて監獄に入れた張本人。再び犯罪者と追跡者となったふたりの男は、宿命の糸に操られるかのごとく、砂塵をあげて荒野を疾走した。フィリップを人質に逃げるブッチが目指すのは、この世に残された唯一のひとつの完璧な楽園“パーフェクトワールド”。しかし、追い詰められ、凶暴性をむき出したブッチは、一夜の宿を提供してくれた男に銃を突きつけるのだった……。
Index
ケヴィン・コスナーとクリント・イーストウッド夢の共演
『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(90)と『許されざる者』(92)。この2本は、西部劇というジャンルが廃れた時代に製作され、アカデミー賞では作品賞に輝いたという共通点がある。しかも、監督したのは俳優で、その俳優が主演もしているという点でも似ている。作品同士の概要が、相似形を成しているのだ。
さらに、もうひとつの共通点として挙げられるのが、ケネディ大統領暗殺事件をモチーフにした1990年代の作品に、ふたりが主演しているという点。『ダンス・ウィズ・ウルブズ』を監督・主演したケヴィン・コスナーは、暗殺事件の捜査を描いた『JFK』(91)で、『許されざる者』を監督・主演したクリント・イーストウッドは、暗殺事件で大統領を守れなかった男を描いた『ザ・シークレット・サービス』(93)で、それぞれ主人公を演じているのだ。
『パーフェクト・ワールド』予告
公開当時、俳優人生で上昇気流に乗っていたふたりが、初共演を果たした映画『パーフェクト・ワールド』(93)。その舞台は、奇しくもケネディ大統領が暗殺された1963年のテキサスだった。そして、この映画が公開された1993年は、事件から30年が経過した節目の年でもあった。劇中では、捜査で使う移動トレーラーについて「ケネディ大統領のダラス・パレードに、こいつも参加する」との説明がある。また、映画の冒頭では、ハロウィーンが舞台だとも描かれている。つまり、物語の始まりは10月31日なのだということがわかる。ジョン・F・ケネディは11月22日に狙撃されることになるので、『パーフェクト・ワールド』は暗殺直前のアメリカ・テキサス州が舞台になっているというわけなのだ。
1960年代にスターとなったクリント・イーストウッドと、1980年代にスターとなったケヴィン・コスナー。奇遇な共通点を持つふたりが『パーフェクト・ワールド』で共演したことは、公開当時のチラシに<ハリウッドの夢が実現>とまで謳われていた。そして多くの映画ファンは、ふたりが師弟関係を結ぶことを夢想した。だが、イーストウッドとコスナーのフィルモグラフィが、その後交わることはなかったのである(2021年現在)。