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『パーフェクト・ワールド』ケヴィン・コスナーとクリント・イーストウッド、師弟関係を構築できなかったふたりの確執

© 1993 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

『パーフェクト・ワールド』ケヴィン・コスナーとクリント・イーストウッド、師弟関係を構築できなかったふたりの確執

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師弟関係を期待させたコスナーとイーストウッドの関係



 『パーフェクト・ワールド』は、脱獄したブッチ(ケヴィン・コスナー)が人質に取った少年フィリップ(T・J・ローサー)と逃亡する中で、ふたりの心の交流が描かれてゆく作品。『俺たちに明日はない』(67)のボニーとクライドのような逃避行を続けてゆくふたりの関係は、どこか疑似家族的な要素を持った父子のようにも見えるのだ。そもそもクリント・イーストウッドの監督作品では、疑似家族的な父子関係を描いてきたという系譜がある。例えば、『ルーキー』(90)の主人公と相棒の若い刑事との関係、『許されざる者』の主人公と賞金稼ぎの若い男との関係、或いは『グラン・トリノ』(08)の主人公と隣家の少年との関係等々。また『センチメンタル・アドベンチャー』(82)では、実息子カイル・イーストウッドと共演し、甥っ子と親子のように旅をする歌手をクリント・イーストウッドが演じていた。


 クリントとカイルは実生活で血縁関係にあるわけだが、虚実を超えても父親と息子のような関係を描いてきたことから判るように、父子関係はイーストウッド監督作品にとって重要なテーマのひとつなのである。それを裏付けるように、『パーフェクト・ワールド』が公開された時には『センチメンタル・アドベンチャー』との類似性が指摘され、『グラン・トリノ』が公開された時には『パーフェクト・ワールド』との類似性が指摘されていたという経緯もあった。同時にそれは父性の不在に起因するものであり、例えば『運び屋』(18)における父親と娘の関係においても同様のテーマが見出せるのである。この映画で娘役を演じたのは、実生活でもクリント・イーストウッドと確執のあった、実娘アリソン・イーストウッドだったのだから尚更だ。



© 1993 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.


 1930年生まれのクリント・イーストウッドと1955年生まれのケヴィン・コスナー。親子ほどの年齢差があるふたりもまた、映画の製作現場において父親と息子のような関係を構築するかのように思われた。しかし、ふたりが「俳優であり監督でもある」という共通のバックグラウンドが、撮影現場に緊張をもたらすことになる。早撮りであるイーストウッドと、リハーサルを繰り返し、じっくりと演出するコスナーには、演出方法に対する姿勢の違いがあったからである。勿論、監督はイーストウッドであり、コスナーは主役とはいえ出演俳優に過ぎない。それゆえ、過度に演出へ口を出すのは御法度だ。しかし、世代の異なるふたりの演出手法は食い違いを見せ、激しい議論に発展することもあったという。


 例えば、こんなエピソードがある。腹を立ててトレーラーで待機をしていたコスナーは、自分が現場に不在であるにも関わらず、イーストウッドがコスナーのスタンドインを使って引きのショットを撮影していたことを知る。コスナーに意見されることを嫌ったイーストウッドは、「顔がわからないショットは君なしでも撮れるから」と戒めた。以来コスナーは、自分の知らないところで撮影が進まないよう、イーストウッドの側から意地でも離れなくなったのだという。だが、そのことがまた意見の食い違いを生み、撮影は何度も中断を繰り返すこととなった。




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