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『ウルフ・オブ・ウォールストリート』スコセッシ×ディカプリオの黄金タッグが贈る超肉食の破格の傑作

(c)Photofest / Getty Images

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』スコセッシ×ディカプリオの黄金タッグが贈る超肉食の破格の傑作

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快楽中枢を刺激するスラップスティック・コメディのハイなリズム



 さて一躍、ベルフォートが金融界のカリスマになってからは、映画自体が「理屈抜き」のハイな状態に突入していく。


 ストラットン・オークモント社はまさしく狂気のるつぼと化し、毎日えんえん馬鹿騒ぎのクレイジーパーティーが繰り広げられる。会社はさながら欲望に駆られた生臭い獣たちの巣。ドラッグとアルコールにまみれつつ、マトに向かっての「小人投げ」というコンプラアウトな遊びが興じられ、社員がコールガールたちと至るところでファックしている。陶酔と混乱、乱交と酩酊の酒池肉林。どいつもこいつもやり過ぎだ。だが最もやり過ぎでふざけ過ぎなのは、スコセッシ御大!(笑)。


 ベルフォートが「最後まで騒ぎまくれ!」と叫ぶように、登場人物が全員ぶっ倒れるまで終わりそうのないこのノリ。しかし実際のところ、ハチャメチャな祝祭はそう長く続かない。やがて非合法の株の売買に手を染め始めたベルフォート並びにオークモント社は、FBIに目を付けられるのだがーー。


(C) 2013 TWOWS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. TM, (R) & Copyright (C) 2014 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.


 この圧巻のアンモラルぶりに呆気に取られつつも、筆者は『ウルフ・オブ・ウォールストリート』を観るたび、言いようのない解放感をもたらされる。このバブリーな高揚は、快楽中枢をダイレクトに刺激する作用があるのだ。


 脚本を務めたテレンス・ウィンターが「自分が利用していたシステムによって堕落する。これは爽やかな若者が金融モンスターに変わる物語だ」「私たちは手ひどい経済破綻(2008年のリーマンショック)を経たのに、責任を負うべき人々はいまだ重要なポジションに居座っている」などと語っているように、本作は強欲な拝金主義に傾き、無軌道に暴走するウォール街の風刺劇や教訓劇と解釈することもできるだろう。しかしジョーダン(冗談)・ベルフォートとはよく言ったもので、彼のパフォーマンスに併せてスコセッシが繰り出すのは、ゲラゲラ笑えるスラップスティック・コメディ(ドタバタ喜劇)のリズムだ。


 確かにベルフォートはクズである。自業自得で破滅に向かう。だが,ある種の異能性を備える彼の懲りない生きざまは、現実の窮屈さをぶち破るアンチヒーロー的な運動性へと変換されて、こちらの活力源となる。観れば速攻でパワーチャージしてくれる、効き目抜群の強壮剤のような映画だ。


 物語の後半では、もともとココ・シャネルのために建造されたものをベルフォートが譲り受けた豪華ヨット船「ナディーヌ号」の沈没や、ベルフォートがFBIに逮捕されるきっかけとなった、鉄板焼き屋チェーン「ベニバナ」経営者、ロッキー青木のマネーロンダリング(資金洗浄)ーーインサイダー事件に絡む麻薬取引疑惑の件なども描かれる。そして、それでもしぶとく立ち上がろうとするベルフォートの(良く言えば、不屈の)姿もーー。


 そんな彼の波瀾万丈を彩る音楽は、まさにごった煮。DJ的な既成曲の巧みな選曲で、映画の疾走力を強化するのはスコセッシのお得意技だが、本作ではビリー・ジョエル「ムービン・アウト」のようなヒットソングから、ロックンロールやパンク、ブルース、ヒップホップからオペラ、トロピカルなど、あらゆるジャンルの曲が混沌と渦巻く(音楽監修を務めたのはランドール・ポスター)。




 『グッドフェローズ』のハイライトで流れるデレク&ザ・ドミノスの名曲「いとしのレイラ」に当たるのが、1980年代後半から90年代にかけて活躍した米ロックバンド、ザ・レモンヘッズによる「ミセス・ロビンソン」(サイモン&ガーファンクルのカヴァー。BPMを随分上げたパワー・ポップ調)から、アラン・トゥーサンのピアノ曲“Cast Your Fate to the Wind”への流れ。ストラットン・オークモント社にFBIが強制捜査で踏み込んでくるシーンだ。


 そのあとエンドロールで流れるのが(『グッドフェローズ』で言えばシド・ヴィシャスの「マイ・ウェイ」に当たる!)、なんと映画の序盤で披露されるマシュー・マコノヒーの変な歌をフィーチャリングした、ロビー・ロバートソンの稀代の奇曲“The Money Chant”。最後の最後まで冗談が効きまくりなのである!



文: 森直人(もり・なおと)

映画評論家、ライター。1971年和歌山生まれ。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。「週刊文春」「朝日新聞」「TV Bros.」「メンズノンノ」「キネマ旬報」「映画秘宝」「シネマトゥデイ」などで定期的に執筆中。



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『ウルフ・オブ・ウォールストリート』

Blu-ray: 1,886 円+税/DVD: 1,429 円+税

発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

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