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『狼男アメリカン』ジョン・ランディスとリック・ベイカーが手がけた、リアルで悲しきウルフマン

(c)Photofest / Getty Images

『狼男アメリカン』ジョン・ランディスとリック・ベイカーが手がけた、リアルで悲しきウルフマン

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プラクティカル・エフェクトの到達点



 ジョン・ランディスはデビュー作『シュロック』で猿人スーツを作成してもらった特殊メイクアップ・アーティストのリック・ベイカーに『狼男アメリカン』の狼男メイクを依頼する。


 『シュロック』撮影中からすでにプロットや方向性について話をしていたこともあり、ベイカーは快諾するのだが、同時期に別の「狼男映画」の依頼も舞い込んでくる。ジョー・ダンテ監督の『ハウリング』(81)である。ベイカーは、ダンテとは『ピラニア』(78)で仕事をしたこともある若手有望株の弟子筋、ロブ・ボッティンを推し、自分は相談役にまわり『狼男アメリカン』に専念する。


 しかし、先行して作られた『ハウリング』を観てベイカーは驚愕することとなる。波打つ筋肉に変形する骨、薄暗い陰影を活かした映像、全身が映る場面はストップモーション・アニメで、こちらもファンタジックで見事な出来栄えだ。師匠としてコレを超えなければいけない。そんな使命感やプレッシャー、ライバル心からベイカーはハードルを上げる。



 そもそも二足歩行の『ハウリング』の狼男より四足歩行の獣へと変身する分『狼男アメリカン』の方がハードルは高かったのだが、さらに加えて明るい場所で、全身の変身を見せきり、合成やストップモーション・アニメを使わずライブアクションでの撮影に耐えうるクオリティの「狼男」造形を目指した。


 『狼男アメリカン』の変身シーンは、明かりのついた部屋の中。デヴィッドが身体の異変を感じ全裸になる場面から始まる。まずは右手から。指が歪曲し甲が伸びていく。たまらず床に倒れると足の甲が伸び、背中が隆起し、全身から体毛が伸びはじめる。見開いた目は黄色く濁り、ついに顔面が歪み口が突き出してくる。


 変形するパーツごとにカットを変えることでリアルで細かな造形を、明るい場所でハッキリと見せていく。この場面は2分40秒ほどのそれほど長いシーンでは無いが、カット数は30を越え、アクションシーンさながらな切り返しでスリリングな見せ場となっている。



 また、実物大の狼がロンドンの街を闊歩する場面では台車に狼男スーツを乗せ、中に人が入り前足を操作。後ろ足を機械仕掛けで動かし、お尻から先はフレームの外に出るように撮影し、細やかかつダイナミックな動きを実現した。


 まだCGの無い時代、実際に造形物を作り上げ変形させる「プラクティカル・エフェクト」の到達点と言えるこれらの場面は、公開年のアカデミー賞に「メイクアップ賞」を新設させ『狼男アメリカン』は最初の受賞作となったのである。




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