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『サイドウェイ』熟成ワインのように深みを増し、愛され続ける傑作ロードムービー

(c)Photofest / Getty Images

『サイドウェイ』熟成ワインのように深みを増し、愛され続ける傑作ロードムービー

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紆余曲折を辿った原作が映画化にこぎつけるまで



 この映画はレックス・ピケットという作者による原作モノ。しかし出版までの経緯はかなり複雑だ。彼の経歴を紐解くと、元々はいくつかの短編映画を手がけた監督でありながら、ハリウッドでは脚本家として『エイリアン3』(92)に参加した過去も持つ。


 その後、小説家として身を立てようとするもうまくいかず、何かと途方に暮れた毎日を送っていたようだ。そんな渦中にあって、自身の経験をもとに胸中をさらけ出すかのように書き上げたのが、小説「サイドウェイ」だった。時は90年代の終わり、彼はこの原稿を出版社と映画会社に送ってどこかの枝にでも引っかかればと望みを託すのだが、しかしここでも、なかなか良い反応は得られなかった。


 とその時、エージェント経由でこれをたまたま読んだアレクサンダー・ペイン監督の目に留まり、映画化の問い合せが舞い込むことに。


『サイドウェイ』(c)Photofest / Getty Images


 かと言って、映画製作は一朝一夕で叶うものではない。ペインは先に『アバウト・シュミット』(02)を手がけていて、『サイドウェイ』の製作スタートまでにはまだまだ数年の時間を要することとなる。というわけで、一般的な「出版→映画化」という流れとは真逆で、本作は先に映画化が決まってから書籍化の契約がまとまった。その後、充分な話題性を狙ってか、映画版のお披露目のほんの数か月前にやっと、ピケットが夢にまで見た書籍が本屋に並んだのである。


 こういった経緯から思い知らされるのは、書籍版にせよ映画版にせよ、本当に驚くべき長い熟成期間を経て収穫、および出荷の時を迎えていると言うことだ。ただし、優れたロードムービーにとって、注がれた時間と手間暇は決して無駄にはならない。挫折の数だけ、地面を這いつくばった時間だけ、”救い”がある。それらは揺るぎない説得力となって、心と体の距離移動にリアリティを与えてくれるのである。




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