1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. スネーク・アイズ
  4. 『スネーク・アイズ』長回しにスプリット・スクリーン、まさにブライアン・デ・パルマならではの興奮と狂気
『スネーク・アイズ』長回しにスプリット・スクリーン、まさにブライアン・デ・パルマならではの興奮と狂気

(c)Photofest / Getty Images

『スネーク・アイズ』長回しにスプリット・スクリーン、まさにブライアン・デ・パルマならではの興奮と狂気

PAGES


ILMが手がけた幻のスペクタクル場面とは?



 さて、いま私の手元にはブライアン・デ・パルマの作品を読み解く上で欠かせない、その名も『デ・パルマ』(15)と銘打たれたドキュメンタリーDVDがある。ノア・バームバックらが監督を務める本作は、製作当時70代なかばと思しき鬼才が穏やかな口調で人生や自作ひとつひとつについて語るという、極めて直球勝負の内容となっている。


 当然ながら『スネーク・アイズ』への言及もある。その中で私が驚いたのは、エンディングについての裏話。本作には”使われなかった別バージョン”があるそうなのだ。


 別バージョン?そんなものはDVDの映像特典なんかでよく目にする、ありふれた定番素材だと思われるかもしれない。でも本件が他とちょっと違うのは、これらの映像が、ILMの特殊技術を用いるほどの極めて大掛かりなものだった点である。


 そこでは、本作の冒頭からリポーターが報じる”ハリケーンの襲来”が関わってくる。物語の終盤、いよいよ主人公たちが絶体絶命のピンチに追い込まれた時、満を持してハリケーンが上陸し、いかにも『ディープ・インパクト』(98)や『パーフェクト・ストーム』(00)を思わせる大波が降りかかる。このくだりのためにILMによる取っておきのスペクタクルシーンが用意されていたのだ。


『スネーク・アイズ』(c)Photofest / Getty Images


 しかしテスト試写を見た人の反応は予想外に芳しくなく、最終的にこれらはポスト・プロダクションの段階でボツになったとか。デ・パルマは今なお悔い続けているようだ。


 一方、そんな別エンディングのことなど知る由もない我々は、デ・パルマが埋め込んだ最後の仕掛けに思わずニヤリとさせられるだろう。


 なかなか終わらない工事現場の長回し映像が、最後の最後で映し出す宝石の輝き。それが示す意味はひとつ----。


 すべての事件が解決したと思いきや、闇は闇のまま。ゴタゴタの中ですっかり忘れ去られてしまう存在もある。まさに豪華に咲く桜の下には”何か”が埋まってる、的なラストと捉えて良いのだろう。ともあれ、本作にはこんなところまでギッシリとデ・パルマ流の映像マジックが詰まっているのである。



参考:

『デ・パルマ』DVD(2018年発売 販売元:TCエンタテインメント 発売元:是空)

https://vfxblog.com/2018/08/07/the-cgi-tidal-wave-in-snake-eyes-that-no-one-got-to-see/

https://www.artofthetitle.com/title/snake-eyes/

http://www.steadishots.org/shots_detail.cfm?shotID=6



文: 牛津厚信 USHIZU ATSUNOBU

1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンII』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。 



今すぐ観る


作品情報を見る



『スネーク・アイズ』(c)Photofest / Getty Images

PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. スネーク・アイズ
  4. 『スネーク・アイズ』長回しにスプリット・スクリーン、まさにブライアン・デ・パルマならではの興奮と狂気