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『ゴーストライター』ロマン・ポランスキーの演出が唸る、実在の人物とリンクするポリティカルサスペンスの傑作

(c)Photofest / Getty Images

『ゴーストライター』ロマン・ポランスキーの演出が唸る、実在の人物とリンクするポリティカルサスペンスの傑作

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名もなき男が辿り着く先は?



 やがて、真実に辿り着いた主人公を待っていたのは、本人も予測していなかった意外な幕切れだ。ポランスキーは、冒頭でマクラの後任に指名された主人公が出版社を出るシーンと、ラストシーンとを上手く対比させている。人間というのは、常に偶然に弄ばれているという、ある種の法則に則っているのだ。また、ゴーストライターという職業に宿命づけられた、実態のない存在についてもさりげなく言及している。ロバート・ハリスの原作でも、映画でも、主人公には名前がないのだ。


 本作は各種メディアに絶賛された。著名な映画評論家のロジャー・エバートは、『スリラーの演出方法を知っている男の作品』と映画の魅力を正統に評価し、政治アナリストのウィリアム・ブラッドリーは、『近年見た中で最高の映画の1つ』と絶賛を惜しまなかった。筆者も同意見だ。


 ポリティカル・サスペンスとしては、荒い部分があるかも知れない。しかし、映画というものがいかに人々の想像力を掻き立て、監督が設定したフレームの中に連れ込み、そこに閉じ込め、興奮させ、震え上がらせる力があるかということを、この映画で天才ポランスキーが実証している。その種の快感こそが、映画を見る愉しみだということを。



文 : 清藤秀人(きよとう ひでと)

アパレル業界から映画ライターに転身。映画com、ぴあ、J.COMマガジン、Tokyo Walker、Yahoo!ニュース個人"清藤秀人のシネマジム"等に定期的にレビューを執筆。著書にファッションの知識を生かした「オードリーに学ぶおしゃれ練習帳」(近代映画社刊)等。現在、BS10 スターチャンネルの映画情報番組「映画をもっと。」で解説を担当。



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