『ゴーストライター』あらすじ
元英国首相アダム・ラングの自叙伝を、前任者に代わって執筆することになるゴーストライター。前任者であるマカラは、不可解な溺死事故で亡くなっていた。仕事を始めた直後、ラングが戦争犯罪に手を染めたとして告発され、英国首相とCIAが密かに繋がっていたのではという疑惑が浮上する。原稿の執筆を続ける中、前任者の遺した膨大な資料とラングの発言に、矛盾があることを見出したゴーストライター。やがて彼は世界を揺るがす巨大な陰謀の闇に近づいていくのだった…。
Index
原作者がブレア支持を撤回した理由
小説家の中には意外な前職を持つ人がいる。薬剤師の助手だったアガサ・クリスティ、配管工だったジョン・グリシャム、郵便配達員だったウィリアム・フォークナー、高校の用務員だったスティーヴン・キング etc…。
彼らに比べれば、1992年にミステリー「ファーザーランド」で作家デビューしたロバート・ハリスが、それ以前にBBCのTVレポーターや政治コラムニストとして活躍していたことは、別に驚くべきことではないだろう。彼が少しだけ異色なのは、2007年にトニー・ブレアがイギリスの首相を辞任したわずか3ヶ月後に、小説「ゴーストライター」を発刊したことかも知れない。なぜならその小説は、ハリスがかつて積極的に支持していたブレア元首相が、アメリカのイラク侵攻にどの国よりも早く賛同した、歴史的暴挙に対する告発がテーマだったからだ。
信じていた政治家が、”ブッシュのプードル”と蔑まれるような行動を選択したことへの怒りと失望が、ポリティカル・ミステリーという形で文章化されたのが「ゴーストライター」だったのだ。
『ゴーストライター』予告
主人公のゴーストライターが、元英国首相アダム・ラングの自叙伝を、前任者に代わって執筆することになる。前任者であるマカラは、不可解な溺死事故で亡くなっていた。アメリカ、マサチューセッツ州のケープコッド南岸沖の島にあるラングの自宅では、妙に挑発的なラングの妻、ルースと秘書のアメリアが、無愛想なメイドと共に留守宅を守っていた。マカラが書き残した膨大な原稿はそこで厳重に管理されていて、持ち出しは禁止だという。アメリアによるとセキュリティ上のリスクがあるらしいが、その内容たるや、不眠症が一瞬にして解消されるほど退屈極まりないものだった。
同じ頃、英国の元外務大臣リチャード・ライカートが、ラングを戦争犯罪に手を染めた疑惑で告発する。なんでも、ラングが首相時代にテロの容疑者を不法に拘束し、CIAによる拷問にかけることを許可した可能性があるのだという。英国首相とCIAが密かに繋がっていたとは!?