(c) 2010 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved.
『メンフィス・ベル』巨匠ウィリアム・ワイラーの実録ドキュメンタリーに基づく10人の青年の物語
巨匠監督の実録ドキュメンタリー
製作に名を連ねるキャサリン・ワイラー女史は、本作における最も重要なキーパーソンである。ワイラーと聞いて、勘のいい映画ファンならすぐにピンとくるかもしれないが、なにを隠そう彼女は、『ローマの休日』(53)『ベン・ハー』(59)などで知られるアメリカの最も偉大な映画監督ウィリアム・ワイラーの愛娘だ。
キャサリンは、コロンビア映画に製作部門副社長として在籍していた際に、自らの父の生涯とその業績を描いたドキュメンタリー『Directed by William Wyler American Masters』(86)を製作。この作品がプライムタイム・エミー賞にノミネートされ、アメリカン・フィルム・フェスティバルではブルーリボン賞を獲得するなど、高い評価を得た。
『メンフィス・ベル』(c) 2010 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved.
ほか、『メンフィス・ベル』の製作には『炎のランナー』(81)『キリング・フィールド』(84)などを世に送り出した名プロデューサー、デヴィッド・パットナム率いるエニグマ・プロダクションが参加。監督のマイケル・ケイトン=ジョーンズは、“20世紀最大の英政界スキャンダル”として語り継がれるプロヒューモ醜聞事件をジョン・ハート主演で映画化した『スキャンダル』(89)で長編映画デビューした直後だった。『メンフィス・ベル』は、このような製作者による最強の布陣で企画されたのだ。
さて、製作のキャサリン・ワイラーが、なぜ本作のカギとなる重要人物なのかというと、本作『メンフィス・ベル』は、ウィリアム・ワイラー監督の実録ドキュメンタリー『メンフィス・ベル:空飛ぶ要塞』(44)を劇映画としてリメイクした作品だからだ。第二次世界大戦中の1943年、従軍映画監督として実際の戦場を撮り続けたウィリアム・ワイラーは、危険なミッションを帯びた“メンフィス・ベル”に乗り込み、数回にわたってドイツ上空を飛び、その実際の戦闘と、“空飛ぶ要塞”を駆る10人の若者の勇姿を16mmカラーフィルムに記録した。
当時、コカ・コーラ社傘下のコロンビア映画で会長兼CEOを務めていたデヴィッド・パットナムと、その製作部門副社長だったキャサリン・ワイラーのふたりは、“メンフィス・ベル”のオリジナル・ドキュメンタリーに強く惹きつけられ、リメイクの企画を始動させた。コカ社のロベルト・ゴイズエタ会長との不仲で、パットナムがコロンビア映画を去った後も、キャサリン・ワイラーはこの企画を死守し、遂にはパットナム率いるエニグマ・プロダクションの後押しで、製作が軌道に乗ることとなった。本作は、キャサリンが亡き父に捧げた究極のリスペクトなのだ。