1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. メンフィス・ベル
  4. 『メンフィス・ベル』巨匠ウィリアム・ワイラーの実録ドキュメンタリーに基づく10人の青年の物語
『メンフィス・ベル』巨匠ウィリアム・ワイラーの実録ドキュメンタリーに基づく10人の青年の物語

(c) 2010 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved.

『メンフィス・ベル』巨匠ウィリアム・ワイラーの実録ドキュメンタリーに基づく10人の青年の物語

PAGES


現存機を使用した本物志向の撮影



 第二次世界大戦下の様々な戦域で活躍した、米陸軍航空隊の最高の名機B-17は、ボーイング社が1934年に開発したアメリカ初の戦略重爆撃機で、“フライング・フォートレス(空飛ぶ要塞)”の愛称を持つ。機体ラインは滑らかな流線型で構成され、強固な防弾装備と圧倒的な武装を有し、空飛ぶ要塞の異名に恥じない活躍ぶりをみせたという。計4基のうち2基までのエンジンが停止しても飛行可能なほど安定性に優れており、大損傷を被っても無事基地へと帰還できることもしばしばだったという。


 その後、第二次世界大戦後期に入ると、防御火器を強化し高空の空中戦に特化したB-17Eが登場。これを基に、さらなる武装・防弾装備を強化し、爆装量を増加させ、大量生産向きに改良したのが、メンフィル・べルの型であるB-17Fだ。



『メンフィス・ベル』(c) 2010 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved.


 本作では、1980年代後半に飛行可能だった8機のB-17のうち、5機のB-17が撮影に使用されている。本物が使用されていることも驚きだが、撮影用のB-17の現存機を見つけ出したことにも驚きを隠せない。現存機はアメリカに2機、フランスに2機、イギリスに1機があり、それを飛ばすために各地から腕利きのパイロットが集められたという。その中には、大戦中にB-17を実際に操縦したイギリスの退役軍人も含まれており、彼は、その豊富な経験と実績を活かして空撮部分のコーディネーターとしてクレジットされたそう。


 それだけでも凄いことだが、さらに驚きなのは、その当時として飛行可能な4機のメッサーシュミット(ドイツ軍の戦闘機)のうち、3機の現存機が撮影のために飛び、B-17をエスコートしたマスタング(アメリカ軍の戦闘機)8機も撮影に参加したという。


 クリストファー・ノーラン監督も驚きの、まさしく本物志向の作品である。CGIによるデジタル処理やミニチュアの特撮では決して表現できない、本物の臨場感と映像美に圧倒されることだろう。


参考:映画『メンフィス・ベル』劇場用プログラム



文: Hayato Otsuki

1993年5月生まれ、北海道札幌市出身。ライター、編集者。2016年にライター業をスタートし、現在はコラム、映画評などを様々なメディアに寄稿。作り手のメッセージを俯瞰的に読み取ることで、その作品本来の意図を鋭く分析、解説する。執筆媒体は「THE RIVER」「IGN Japan」「リアルサウンド映画部」など。得意分野はアクション、ファンタジー。



今すぐ観る


作品情報を見る




『メンフィス・ベル』DVD ¥1,572(税込)

発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント

(c) 2010 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved.

PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. メンフィス・ベル
  4. 『メンフィス・ベル』巨匠ウィリアム・ワイラーの実録ドキュメンタリーに基づく10人の青年の物語