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『ヒート』夢の競演!アル・パチーノVSロバート・デ・ニーロ、2大スターの名演をフィルムに定着させた名匠マイケル・マンの手法とは

『ヒート』夢の競演!アル・パチーノVSロバート・デ・ニーロ、2大スターの名演をフィルムに定着させた名匠マイケル・マンの手法とは


全てを語る「視線の演技」



 実際には2人のバストショット以外にも俯瞰や2ショットも撮影した。しかし、最終的にそれらのカットは使われなかった。マンはバストショットを交互に見せるシンプルな編集構成を選んだ。この処理が2人の競演がフェイクではないかという疑惑を生んだが監督のマンにはある明確な意図があった。


 「2人は互いに調和し役になりきった。ロバートは姿勢を変えたり、首を傾げたりして表情を少しずつ変える。アルはそれに呼応して演技していた。どのテイクにも独特の調和があり自然な流れが感じられた。あのシーンの一番の理解者は編集マンと私だ。全てのテイクを細かく見ているからね。交互に見せることで2人の演技が融合する。主にテイク11を使ったよ」


 監督のマンが重視したのは「視線」だった。アル・パチーノとロバート・デ・ニーロは、セリフの応酬の中で視線を合わせたり逸らしたりを繰り返す。そのタイミング、角度の違いで、お互い似ていると理解していくことを、表現したいと考えた。


 マンは「視線の演技」を最大限に生かすため、迷わず2ショットや俯瞰のカットは捨て、表情がよく見えるタイトなバストショットだけでこのシーンを構成した。それは、正反対の立場の男が僅かな会話で心を通わせるというシーンを成功させるため、必然的に選択された手法だったのだ。




 ニール(デ・ニーロ)とヴィンセント(パチーノ)は犯罪者と警官、追う者と追われる者という立場の違いはあるが、その境界線は曖昧だ。『ヒート』を見ているとまるで2人が昔からの友人かと錯覚してしまう。恋人や家族との関係はうまくいかず、己の仕事を完遂し流儀を貫き通すという妄執にとりつかれた男たち。マイケル・マンはそんな破滅へと向かう道程でしか生を実感できない男たちの心の交流を描いた。そして、それを可能としたのは2大俳優が演技のぶつかり合いの中で見せた「視線の演技」だったのである。



文:稲垣哲也

TVディレクター。マンガや映画のクリエイターの妄執を描くドキュメンタリー企画の実現が個人的テーマ。過去に演出した番組には『劇画ゴッドファーザー マンガに革命を起こした男』(WOWOW)『たけし誕生 オイラの師匠と浅草』(NHK)など。現在、ある著名マンガ家のドキュメンタリーを企画中。



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ヒート 製作20周年記念版<2枚組>  

2017年03月03日発売(発売中)  希望小売価格 ¥5,980+税 

(C)2017 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved. 

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