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『シド・アンド・ナンシー』パンクなラブストーリーにして伝記映画、そして痛烈な風刺劇

(c)Photofest / Getty Images

『シド・アンド・ナンシー』パンクなラブストーリーにして伝記映画、そして痛烈な風刺劇

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ビートルズと似ていた!? セックス・ピストルズの内幕



 物語は史実の重要なエッセンスを抽出し、シドとナンシーの愛憎の日々を浮き彫りにしていく。ともにジャンキーで、おたがいを必要としながらも、ときに憎み合って離れては、元サヤに戻り、さらにドラッグに依存する。このロマンスは始めから破滅が約束されていた……とも言えるだろう。これが真の恋と呼べるのかどうかは意見がわかれるところだが、二十歳そこそこの若者同士の恋であることを思えば腑に落ちるし、やはり壮絶なラブストーリーである。


 話はそれるが、ロック史的に見ても、これは興味深い。シドはナンシーなしでは生きられず、バンドの存続を望むジョニーは、シドを破滅に導く彼女を毛嫌いした。これは“ボーイズクラブ”だったビートルズが、ひとりの女性の介入に端を発して内部のゴタゴタに発展したエピソードをほうふつさせる。ジョン・レノンが恋人で後の妻オノ・ヨーコをスタジオに連れ込んだことでバンド内に不協和音が響き、さらにヨーコがバンドに意見するようになったことで力関係がおかしくなり、当時ビートルズを牽引していたポール・マッカートニーはそんなジョン&ヨーコに拒否反応を示していたという。『シド・アンド・ナンシー』にはナンシーが偉そうな口をきいてジョニーがムッとする場面があるが、そんなビートルズの逸話が思い出される。



『シド・アンド・ナンシー』(c)Photofest / Getty Images


 ともかく、本作がロック史に名を刻んだ人々の生き方を刻んでいることは間違いない。ジョニーは頭の回転が速く、シニカルなウィットを武器にして封建的な社会を挑発した。対するシドは気に入らないモノすべてに対して、本能的にノーと言い続けた。そこに決定的な違いがある。そういう意味では、ピストルズが分裂するのは時間の問題だったのだろう。劇中では、そんな不協和音も生々しく描かれている。




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