ニュージーランドの絶景が映画にふさわしいと証明
ジェーン・カンピオン、ピーター・ジャクソンといった才能を生んだニュージーランドは、彼らの世界的名声と、他の国とは違う独自の自然風景を武器に、映画産業に力を入れ始める。特に重視したのは、ハリウッド大作のロケ地の誘致だ。ピーター・ジャクソンの『ロード・オブ・ザ・リング』3部作(01~03)が、ニュージーランドの大自然とファンタジー世界の相性がばっちりであることを証明。ホビットやエルフなどが違和感なく溶け込み、当然のごとく、同じ世界観の『ホビット』3部作(12~14)でもニュージーランドの絶景が多用された。
『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』予告
『キング・コング』(05)では首都ウェリントンの、ふだんはサーファーで賑わう海岸がスカルアイランドの一部となった。これらピーター・ジャクソンの作品は、彼が設立したWETAデジタルのスタジオも制作に関わったことで、WETAの実力がハリウッドにも高く評価される。その結果、『アバター』(09)をはじめ、『猿の惑星:創世記』(11)、『アベンジャーズ』(12)など映像を革新するアクション超大作でWETAのデジタル技術が重宝されることで、ニュージーランド映画産業の発展を支えたのである。
ファンタジー大作ということで『ナルニア国物語』シリーズ(05~10)も多くのシーンをニュージーランドで撮影。意外な作品では『ラスト サムライ』(03)。その外観が富士山にそっくりというタラナキ山を背景に、周辺に村のセットが組まれ、アクションシーンのロケ地となった。ニュージーランドで日本が再現されたのである。『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(18)の撮影では、南島のリゾート地、クイーンズタウンの上空でトム・クルーズがヘリコプターを操縦した。その他にも『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』(09)、『ガンズ・アキンボ』(19)などニュージーランドで撮影されたことを「知られていない」作品は数多い。
また、隣国オーストラリアのシドニーも巨大なスタジーを擁しており、近年、ハリウッド大作やTVシリーズの撮影が数多く行われるようになった。『エイリアン:コヴェナント』(17)は、セットでの撮影はシドニーで行い、惑星シーンは、ニュージーランドのフィヨルドランド国立公園でロケ。隣国同士、アクセスの良さを利用した連携もみられる。
このようにニュージーランドが世界的ヒット作の撮影現場に発展させたきっかけを、間接的とはいえ作ったのが『ピアノ・レッスン』であり、映画制作におけるジェンダーの偏りも、意識的ではないとはいえ修正していたわけで、結果的に多くの点で「パイオニア」的な作品なのである。
文:斉藤博昭
1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。
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