Index
- アカデミー賞で最多タイとなる11部門受賞
- 3部作構成に落ち着くまでの、試練の日々
- こだわりの美術、革命的だった視覚効果
- 堅固な世界観で輝く、友情と自己犠牲
- サムの「変わらなさ」が象徴する、絆のドラマ
- 指輪という“力”に、独りで挑まないという光明
アカデミー賞で最多タイとなる11部門受賞
「ファンタジー映画の金字塔」――『ロード・オブ・ザ・リング』は、その名を冠するにふさわしい傑作シリーズだ。
J・R・R・トールキンによる長編小説シリーズ「指輪物語」を3部作で実写映画化し、完結編の『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』(03)は、第76回アカデミー賞で作品賞・監督賞を含む11部門で受賞。これは、『ベン・ハー』(59)『タイタニック』(97)と並ぶ最多受賞のタイ記録であり、ファンタジー映画では初。名実ともに、映画史を塗り替えた作品となった。
まずは改めて、本シリーズが残した数字を振り返ってみよう。(2020年8月1日現在)
『ロード・オブ・ザ・リング 旅の仲間』(01)…世界興行収入8億8,700万ドル超(歴代65位)。日本国内興行収入は90.7億円(歴代54位)
『ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔』(02)…世界興行収入9億5,100万ドル超(歴代57位)。日本国内興行収入は約79億円(歴代74位)
『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』(03)…世界興行収入11億4,100万ドル超(歴代24位)。日本国内興行収入は103.2億円(歴代33位)
※第1作の公開時のタイトルは『ロード・オブ・ザ・リング』だが、ここではシリーズ3部作と区別するため、『ロード・オブ・ザ・リング 旅の仲間』と記載する。
近年の日本国内の興行収入でいうと、『トイ・ストーリー4』(19)が100億円、実写版『アラジン』(19)が121億円、『ボヘミアン・ラプソディ』(18)が131億円。これらの作品を並べてみると、本作の立ち位置が見えてくる(本シリーズの上映時間の長さや入場料金の値上がりを加味すると、動員数の差自体は、興収よりは少ないのかもしれない)。
ちなみに、『ロード・オブ・ザ・リング 旅の仲間』が日本公開された2002年は洋画のラインナップがすさまじく、前年末に公開され、国内興収203億円の特大ヒットを記録した『ハリー・ポッターと賢者の石』に続く『ハリー・ポッターと秘密の部屋』、『モンスターズ・インク』、『スター・ウォーズ エピソード2 クローンの攻撃』、『スパイダーマン』、『オーシャンズ11』、『メン・イン・ブラック2』と、とんでもない猛者たちが並ぶ(これでも一部というのが恐ろしい)。この中でもきっちり数字を残したという点で、『ロード・オブ・ザ・リング 旅の仲間』も十二分に化け物レベルといえよう。
『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの人気は公開後も衰えず、数十分の未公開シーンを追加した「スペシャル・エクステンデッド・エディション」も、ファンの間で爆発的な人気を集めた。ちなみにこちら、3部作すべてが200分超え。通して観ると10時間を優に超えるのだが、原作ファンの心をわしづかみにする垂涎モノのシーンも多く、マストアイテム化している。
第1作の約10年後には、前日譚を実写映画化した『ホビット』3部作(12~14)が公開。現在はAmazon製作のドラマシリーズも進行中で、7月には英国の映画館でリバイバル上映も行われ、ヒットを記録したという。原作の刊行から約66年、実写映画の公開から約18年を経ても、いまだ本シリーズの“熱”が収まることはない。