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『ダーククリスタル』人形劇のイメージを大きく変えた、ジム・ヘンソンの不思議な世界

TM&(c)1982,2007 THE JIM HENSON COMPANY,ALL RIGHTS RESERVED.THE DARK CHRYSTAL MARK&LOGO,CHARACTERS AND ELEMENTS ARE TRADEMARKS OF JIM HENSON COMPANY,ALL RIGHTS RESERVED.

『ダーククリスタル』人形劇のイメージを大きく変えた、ジム・ヘンソンの不思議な世界

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『ダーククリスタル』あらすじ

1000年前、宇宙を支配するクリスタルが砕け、悪の化身スケクシス、平和を愛するミスティクスの2つの種族が誕生した。以来世界はスケクシスが支配し、腐敗と貪欲がはびこっていた。予言では3つの太陽が重なる大会合の前に、クリスタルをもとに戻さないと世界は永久に悪に支配されてしまうと言う。ミスティクスはゲルフリンの少年ジェンに望みを託す。


Index


誰もが抱える“善”と“悪”の関係性



 ジム・ヘンソンの名作『ダーククリスタル』(82)は、驚くべき作品である。この映画の、不可思議でマジカルな世界観は、今までにない映像を届けてくれた。そして、“善”と“悪”という普遍的でシンプルなメッセージを擁する、まさしく紋切り型のファンタジーだ。しかし、この映画には、人間の俳優はまるっきり登場しない。というのも、画面を彩るキャラクターは、驚くことにすべて人形で作られている、全編アニマトロニクスの作品だからだ。


 人形遣いの第一人者として知られるジム・ヘンソンは、この作品を通じて、以前は子ども向けだった人形作品を、大人さえ魅了させるジャンルへと昇華させたのだ。近年では、前日譚となる『ダーククリスタル:エイジ・オブ・レジスタンス』(19)がNetflixで製作されるなど、今もその人気は色あせることがない。まさに映画史に燦然と輝くカルト作品だ。


『ダーククリスタル』予告


 物語の舞台となるのは、3つの太陽が光り輝く、神秘の惑星トラ。この世界に棲んでいるのは、人間でもなく動物でもない、この世のものとは少し違う、聖なる生き物だ。石も岩も、山も木々も、水辺のコケでさえ、すべてが生命を帯びた場所だ。惑星の中心には巨大なクリスタルが輝き、緑豊かな土地が広がっていた。しかし、ある時、命の源であるクリスタルが割れ、砕けたクリスタルの欠片はいずこかへ消えてしまった。そうして平和な世界は、深淵なる暗黒へと包まれ、かつての繁栄は過去のものとなった。


 クリスタルが割れたとき、この大地に“善”と“悪”の対照的な種族が生まれ出た。ミスティックス族と、スケクシス族だ。亀のようなミスティックスは、穏やかな性格で、まさしく“善”の精神に満ちあふれている。対して、ハゲワシのようなスケクシスは、クリスタルを乱用する“悪”の支配者で、惑星トラに悪政を敷いている。この世界を救うには、消えたクリスタルの欠片をもとの場所に戻さなければならない。その使命を帯びたゲルフリン族のジェンは、世界を救う危険な旅路に立った……。



『ダーククリスタル』TM&(c)1982,2007 THE JIM HENSON COMPANY,ALL RIGHTS RESERVED.THE DARK CHRYSTAL MARK&LOGO,CHARACTERS AND ELEMENTS ARE TRADEMARKS OF JIM HENSON COMPANY,ALL RIGHTS RESERVED.


 『ダーククリスタル』の最大のテーマは、誰もが持ち合わせる“善”と“悪”の関係性である。映画ではミスティックスとスケクシスを、それぞれ“善”と“悪”の権化として描いている。しかし、この映画におけるスケクシス、すなわち“悪”の要素というのは、本当に排斥すべきものなのか。すこし穿った見方をすると、人間にとって“悪”というのは、時には必要なものであるはずだ。すなわち、この映画が指し示すのは、善悪の一体性なのである。人間というのは誰しも、ミスティックスとスケクシス、その両方を持ち合わせているし、そのどちらも必要だということだ。



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