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『ダーククリスタル』人形劇のイメージを大きく変えた、ジム・ヘンソンの不思議な世界

『ダーククリスタル』人形劇のイメージを大きく変えた、ジム・ヘンソンの不思議な世界

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誰もが抱える“善”と“悪”の関係性



 ジム・ヘンソンの名作『ダーククリスタル』(82)は、驚くべき作品である。この映画の、不可思議でマジカルな世界観は、今までにない映像を届けてくれた。そして、“善”と“悪”という普遍的でシンプルなメッセージを擁する、まさしく紋切り型のファンタジーだ。しかし、この映画には、人間の俳優はまるっきり登場しない。というのも、画面を彩るキャラクターは、驚くことにすべて人形で作られている、全編アニマトロニクスの作品だからだ。


 人形遣いの第一人者として知られるジム・ヘンソンは、この作品を通じて、以前は子ども向けだった人形作品を、大人さえ魅了させるジャンルへと昇華させたのだ。近年では、前日譚となる『ダーククリスタル:エイジ・オブ・レジスタンス』(19)がNetflixで製作されるなど、今もその人気は色あせることがない。まさに映画史に燦然と輝くカルト作品だ。



 物語の舞台となるのは、3つの太陽が光り輝く、神秘の惑星トラ。この世界に棲んでいるのは、人間でもなく動物でもない、この世のものとは少し違う、聖なる生き物だ。石も岩も、山も木々も、水辺のコケでさえ、すべてが生命を帯びた場所だ。惑星の中心には巨大なクリスタルが輝き、緑豊かな土地が広がっていた。しかし、ある時、命の源であるクリスタルが割れ、砕けたクリスタルの欠片はいずこかへ消えてしまった。そうして平和な世界は、深淵なる暗黒へと包まれ、かつての繁栄は過去のものとなった。


 クリスタルが割れたとき、この大地に“善”と“悪”の対照的な種族が生まれ出た。ミスティックス族と、スケクシス族だ。亀のようなミスティックスは、穏やかな性格で、まさしく“善”の精神に満ちあふれている。対して、ハゲワシのようなスケクシスは、クリスタルを乱用する“悪”の支配者で、惑星トラに悪政を敷いている。この世界を救うには、消えたクリスタルの欠片をもとの場所に戻さなければならない。その使命を帯びたゲルフリン族のジェンは、世界を救う危険な旅路に立った……。




 『ダーククリスタル』の最大のテーマは、誰もが持ち合わせる“善”と“悪”の関係性である。映画ではミスティックスとスケクシスを、それぞれ“善”と“悪”の権化として描いている。しかし、この映画におけるスケクシス、すなわち“悪”の要素というのは、本当に排斥すべきものなのか。すこし穿った見方をすると、人間にとって“悪”というのは、時には必要なものであるはずだ。すなわち、この映画が指し示すのは、善悪の一体性なのである。人間というのは誰しも、ミスティックスとスケクシス、その両方を持ち合わせているし、そのどちらも必要だということだ。



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