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『ダーククリスタル』人形劇のイメージを大きく変えた、ジム・ヘンソンの不思議な世界

『ダーククリスタル』人形劇のイメージを大きく変えた、ジム・ヘンソンの不思議な世界

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大人の視聴者に向けた新機軸のマペット作品



 監督ジム・ヘンソンが『ダーククリスタル』の着想を得たのは、米国の人気バラエティ番組「サタデー・ナイト・ライブ」で、マペットを使ったスケッチコメディ「The Land of Gorch(ゴーチの国)」を担当していたときのことだった。「The Land of Gorch」は、沼地のような場所に棲んでいる、鳥のようなグロテスクな生き物の家族を描いた、大人向けのコメディだ。同作は、成人向けのテーマを扱っており、しばしばアルコール依存、種の絶滅、セクシュアルなギャグなどを含んだ、それまでのマペット作品とは一線を画したものだった。


 ヘンソンがマペットを“子ども向け”というイメージから払拭させようとしたのもこの時期のことだった。それまでのヘンソンの作品というのは、「セサミストリート」など子どもを対象とした作品がほとんどだったので、ヘンソンは次第に、大人の視聴者に向けたコンテンツの制作に野心を燃やしていた。「The Land of Gorch」は短命に終わったが、この作品での経験は、『ダーククリスタル』など以降のヘンソン作品に大きな影響を与えたとされている。




 例を挙げると、「The Land of Gorch」のマペットには、剥製用に使われる特製の眼球が初めて用いられた。単なる人形でしかないマペットを、より生物らしくリアルに見せるという効果があったのだ。この剥製用の眼球は、『ダーククリスタル』のキャラクターにも使用されるなど、「The Land of Gorch」を通じてマペットの技術は格段に上がっていた。


 また『ダーククリスタル』がほかのマペット作品と大きく異なる点は、登場するマペットたちの滑らかな動きだろう。人形の一つひとつに生命が宿っているかのような、感情の起伏を動きだけで表現している凄み。それまでのマペット作品は、動きが機敏すぎるがゆえに、不自然な挙動を見せていたが、本作ではそれがまったくない。映画界最高のベテラン・スタッフが集結し、480人という優秀な技術者を動員した本作は、容易く超えることはできない作品だ。




 さて、『ダーククリスタル』における斬新なアイディアの源泉は、前述の「The Land of Gorch」だけではない。ヘンソンがこの映画の素晴らしい物語を思いついたのは、「不思議の国のアリス」で知られる英国の作家、ルイス・キャロルの詩「The Pig-Tale(豚のお話)」の絵本を読んだときだったそうだ。


 その詩の絵本には、ヴィクトリア朝時代の美しい浴室に、貴族の洋服を着たワニの挿絵が描かれている。そこから転じて、「人間のように振る舞う爬虫類が天下をとる社会」という、奇抜な構想が練られたのだ。それらイメージは映画の中で、クリスタルを用いて社会を牛耳るスケクシス族として結実している。そういう様々な経験と、ルイス・キャロルの詩を借りた本作は、大人向け人形劇の嚆矢として語り継がれることとなったのである。


<参考>

映画『ダーククリスタル』劇場用プログラム



文: Hayato Otsuki

1993年5月生まれ、北海道札幌市出身。ライター、編集者。2016年にライター業をスタートし、現在はコラム、映画評などを様々なメディアに寄稿。作り手のメッセージを俯瞰的に読み取ることで、その作品本来の意図を鋭く分析、解説する。執筆媒体は「THE RIVER」「IGN Japan」「リアルサウンド映画部」など。得意分野はアクション、ファンタジー。



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『ダーククリスタル』

ブルーレイ発売中 ¥2,381+税

ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

TM&(c)1982,2007 THE JIM HENSON COMPANY,ALL RIGHTS RESERVED.THE DARK CHRYSTAL MARK&LOGO,CHARACTERS AND ELEMENTS ARE TRADEMARKS OF JIM HENSON COMPANY,ALL RIGHTS RESERVED.

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