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ファンタジー映画の金字塔!『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ3部作を振り返る

ファンタジー映画の金字塔!『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ3部作を振り返る

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3部作構成に落ち着くまでの、試練の日々



今でこそ歴史的シリーズである『ロード・オブ・ザ・リング』だが、制作に至るまでは多くの苦労が付きまとったという。監督を務めたピーター・ジャクソンは、幼い頃より原作の大ファンだったが(彼の中では「指輪物語」の実写化と『キングコング』の再映画化が夢だったとか。どちらも叶えているのは流石だ)、トントン拍子に事は進まなかった。


そもそも、彼の映画監督としてのキャリアは、『ロード・オブ・ザ・リング』まではホラー作品ばかり。1994年の監督作『乙女の祈り』でヴェネツィア国際映画祭の銀獅子賞(監督賞)に輝いたほか、アカデミー賞脚本賞にノミネートされるなど絶賛されたが、どちらかといえばアート寄りの作品であり、ブロックバスター作品へのルートが確約されていたわけではなかっただろう(現在なら、マーベル映画への抜擢などは十分起こりうる話だが)。


その後、『乙女の祈り』を気に入ったロバート・ゼメキス監督がラブコールを送り、マイケル・J・フォックス主演でホラーコメディ『さまよう魂たち』(96)を制作。この映画がジャクソン監督のハリウッドデビュー作となった。



『乙女の祈り』でみせた耽美な映像表現や、『さまよう魂たち』でのCGの使い方は『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズにも受け継がれているといえるが、『さまよう魂たち』は制作費が概算3,000万ドルに対し、興行収入が約2,900万ドルとやや厳しい結果に。手腕は間違いなくとも、スタジオが大手を振って「さあどうぞ」とGOサインを出すには、まだリスキーなようにも映る。


とはいえ、ジャクソン監督は『乙女の祈り』で関係を深めた映画会社ミラマックスの設立者ハーヴェイ・ワインスタインと組んで、「指輪物語」の映画化交渉に乗り出した。途中、ジャクソン監督がユニバーサルから新生『キングコング』のオファーを受けるなど紆余曲折あったようだが、最終的に2部作で「指輪物語」を映画化することに落ち着いたそう。


ただ、ここからも苦難は続く。CG技術が発達したとはいえ、「指輪物語」はあまりにも壮大な物語。製作費が予定よりも大きくかさむ見通しとなり、スタジオは2本の計画を1本に圧縮すると決めたというのだ。




ここまでいってしまうと、もはやどうあがいても「指輪物語」のダイジェスト版にしかならず、映画化する意味自体が損なわれることにもなりかねない。ジャクソン監督はこの決定に納得がいかず、4週間をかけてスタジオを行脚したという。その結果、ニュー・ライン・シネマに行き着き、「原作通り3部作で映画化する」という、まさに“天の啓示”がもたらされたのだ。


2部作→単作→3部作という数奇なルートをたどった「指輪物語」は、こうした経緯で現在の形へとたどり着いた。冒頭に述べたように、3部作=9時間でも足りず、エクステンデッド・エディション=10時間の超大作になったことからみても(そしてこのバージョンが高く評価されている)、この物語は短縮してしまっては成立しない。結果的に興行・評価の両面で大成功を収めており、つくづくニュー・ライン・シネマの英断には脱帽させられる。



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