『ブリット』カーチェイスの新たな地平を築いた、’60年代を代表する刑事ドラマ

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2021.05.20竹島ルイ

カーチェイスに納得していなかったマックイーン

　従来、カーチェイスは第二班が撮影するものだ。しかし、当初からピーター・イエーツは自分で撮影することにこだわっていた。もちろんそれは、スティーブ・マックイーンが多くのスタントを自分でこなすことを知っていたから。彼はハリウッドでも指折りのカーレーサーなのだ（実際には、名スタント・ドライバーのバド・イーキンスも多くのシーンで運転している）。

　しかしながら、クルマには並々ならぬこだわりがあるマックイーンは、このカーチェイスにはあまり納得していないご様子。本人のインタビューを抜粋してみよう。

　「脚本では、フランク・ブリットはメルセデスのコンバーチブルを運転することになっていた。彼は教養があり、キャリアがあり、物事に積極的に取り組む人物だから、当然そのような車を運転するだろう。だけど、スタント・コーディネーターにとっては無理な注文だったようで、彼らはジャンクヤードかどこかに行って、このオンボロのマスタングを持って帰ってきたんだ。俺は言ってやったよ、これは変態が乗るような車だってね。」（インタビューより抜粋 *1）

　いきなりクルマのチョイスにご立腹である。マックイーンの愚痴は止まらない。

　「あのシーン（カーチェイス）で、俺は嫌な顔をしているんだ。あれは演技じゃないよ。本当の俺だ。うんざりしている。知っての通り、あのシーンはゴミだった」（インタビューより抜粋 *2）

　もう罵詈雑言の嵐である。しかし、彼のこの発言が本気かどうかはわからない。撮影が終了したあと、マックイーンは映画で使われたマスタングを購入しようとしていたからだ。“ゴミ”呼ばわりしていたカーチェイス、そのシーンで使った“変態が乗るような車”を、わざわざ手に入れようとするだろうか？

　間違いなく、『ブリット』は’60年代を代表する刑事ドラマだ。直後に作られた『フレンチ・コネクション』（71）や『ダーティハリー』には、明らかにその影響が見て取れる。『ヒート』（95）の有名な空港での対決シーンも、『ブリット』へのオマージュだろう。ジョン・ウーやウィリアム・フリードキンは、本作がフェイバリット・ムービーであることを公言している。つまり最終的に何が言いたいかというと、『ブリット』サイコー！っていうことであります。以上！

*1：https://www.hagerty.com/media/people/in-this-long-lost-interview-steve-mcqueen-talks-le-mans-bullitt-and-gulf-blue/

*2：https://www.hagerty.com/media/people/in-this-long-lost-interview-steve-mcqueen-talks-le-mans-bullitt-and-gulf-blue/

文：竹島ルイ

ヒットガールに蹴られたい、ポップカルチャー系ライター。WEBマガジン「POP MASTER」主宰。

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